虐待なんて受けてない、友達だっている、今は居ないけど、頭もいい…と思いたい、スポーツも他の人よりかはできる方だ。
だけどたまに思う。
なんで私は今日も生きているのかと。

千奈(ちな)ー!置いてくよー」
私は友人の涼葉(すずは)の声でハッとした。
「ごめーん今行く」
今日、私と涼葉は二人で海に来ていた。海には来たけれど季節は春。まだ泳げない時期だ。
春の暖かい風邪を浴びながら私は涼葉を追いかけた。
涼葉は運動が苦手だ。だから少し走っただけで追いつくことが出来た。
「千奈速いよ〜」
涼葉は疲れたような表情で私の手を握った。
涼葉の手は暖かい。リラックスできるような、どこか寂しいような暖かさをしている。
「ねえ、涼葉」
「なんだい千奈さんよ」
ふざけ気味で応える涼葉。これはいつもの事だからもう慣れてきた。
「なんで春なのに海に来たの?」
私はずっと疑問に思っていたことを口にした。今日は家でだらけようと思っていたら突然涼葉から急いで近くの海に来てと連絡が来るもんだから焦って来てみれば、涼葉は何事もなかったように私と話をし始めた。だからなんで海に来たのかは分からなかったのだ。
「そりゃぁ、お祝いだよ!」
「お祝…あぁ」
納得した。私と涼葉は今年から高校生になる。涼葉は美容系の専門へ、私は普通の公立へ行った。高校が離れるのは嫌だったけど涼葉にはちゃんとした夢がある。私はただ、背中を押すだけしか出来なかった…。
「…今日でお別れだね」
「だね…今までありがとね千奈」
涼葉は明日、県外へ行くのだ。だからきっと私と涼葉、二人の好きな海へ来たのだろう。
私たちは海を眺めながら静かに涙を流していた。