「……血が止まらない!」

フィオナの心に焦りが生まれる。何年ぶりに感じる感情だ。しかし、それに驚いている暇などない。シオンを助けなければならないのだ。

傷口に破ったスカートを巻き付け、さらに手で押さえる。しかし、シオンは優しく微笑み、「もう……無理だ……」とフィオナの手を包んだ。

「肺を……撃たれたんだ……。あと……三十分ほどで……私は……」

その先に続く言葉が何なのか、嫌でもわかる。シオンは咳き込み、口からも血が吐き出された。その光景を見てフィオナの頭の中に浮かぶのは、特殊捜査チームのリーダーであるシオンの姿だ。

的確な指示を出し、真面目に調査をし、感情を持たないフィオナのことでさえ気にかけてくれる。彼女ほど理想の上司はいない。そう思った刹那、フィオナの目の前がぼやけ、何かが目から次々とこぼれ落ちて行く。しかし、それが何か今のフィオナは気にしていられなかった。ただ、シオンの手を掴む。