玄関の鍵をフィオナが閉めていると、後ろから声をかけられる。フィオナが振り向けば、幼なじみのエヴァン・カランコエが笑顔で手を振っていた。彼も特殊捜査チームの一員である。

「ええ。構わないわ」

フィオナがそう言い歩き出そうとすると、エヴァンが「待って!」とフィオナの手を掴む。突然のことにフィオナは驚いたものの、それは表情に出ることはなかった。

「実はね、お母さんからおいしいケーキ屋さんを教えてもらったんだ。特殊捜査チームのみんなと食べるために買って行かない?ここから近いところにあるから」

お願い、と強く言われてフィオナは腕時計を見る。集合時間まではまだまだ余裕がある。ゆっくりケーキを選んだとしても遅刻することはないだろう。

「わかったわ。行きましょう」

フィオナがそう返すと、エヴァンは「やった!」と目を輝かせる。そして「こっちだよ」とフィオナの手を引いて歩き始めた。エヴァンはいつも以上にご機嫌で、鼻歌を歌っている。