私は闇に紛れている。
昼間は怖いの。みんなが不吉だって、指を差して、石を投げるから…

私は真っ黒。底知れぬ闇のようだと言われた。目だけが眩しく光る。

ご主人様は今そばにいない。
仲良く穏やかに暮らしていたのに、たくさんの人間が、ご主人様を連れて行ってしまった。
だから……。

「私のかわいいお前、心配はいらないよ…。また戻ってくる…きっと」
そう言って。

良い子で待っていたのに…

ずっと待っていたのに…

優しいご主人様、私を置いてどこか知らない所へ行ったりしない。だから探しに行くの。

あんなに人間がいたんだから、きっとご主人様の場所を知っている人がいる。でも、森の奥よりも人間が多いから…みんなが私を嫌うから…私は隠れてご主人様を探すしかない…。

「ご主人様がいないよ…お腹が減った…」

何でもできるご主人様と違って、私はただの幼い黒猫で、森の奥の小屋を飛び出して来たところで食べるものも無い。
人間は私を嫌って、近づくことなんてしない。

でも、探しに行かなきゃ、きっとご主人様もいま一人ぼっちだ。

「…魔女狩り…またあったようだな…」

「関与したらしい人間も男女関係なく、火炙りだったそうだ…」

何のことだろう…私にはわからない。でも、とても怖いことがあったことだけはわかった。
ご主人様、怖がっていたかもしれない…早く、早く……

大きな広場についた。辺りに立ち込める煙の匂いが鼻につく。

「あ……」

広場のそばで見つけたのは間違いない、昔、ご主人様にあげたスベスベな石だ。キレイで不思議な色をしている……