白衣と弁当

「こほん。
……それで、だ。
あの日から、うまか棒がおいしくないんだ。
そもそも、君がいつもくれる弁当がおいしいから、友人に押しつけられた弁当もおいしいのかと思ったら違ってたし。
不思議でしょうがない」

……あ。
一応、おいしいとは思っていてくれたんだ。

しきりに首をひねってる神長さんはどうも、問題点が微妙にずれてる気がする。

「君の弁当をもう一度食べたら解決すると思うんだ。
……ん?
その弁当は君が作ったの?」

「あっ……!」

止める間もなく、父のお弁当を奪われた。
そのまま、あっという間にお弁当ハンカチをほどいてしまう。

「いただきます」

なにが起きたのかわからなくて、呆然としてる私を無視し、神長さんは律儀にも両手を合わせると蓋を開けて玉子焼きを一口。

「……?」

なぜか、口をもぐもぐさせながら首をひねってる。
ごくんと飲み込むと今度はきんぴらを口に運ぶ。
そしてまた首をひねってごくんと飲み込むと、残念そうに箸を置いた。

「これじゃない。
これじゃないんだ」

どういうことだろう?
母は料理上手で、おいしくない、なんてことはないはず。

「これは君が作ったの?」

「母ですけど……」

ぐいっ、神長さんの顔が迫ってくる。
近い、近いですから!