白衣と弁当

「僕は、君が作った弁当が食べたい」

「は、はぁ。
じゃあ、明日作ってきます」

「うん。
待ってる」

こうして私は半ば神長さんに気圧されて、お弁当を作ってくる約束をしてしまった。


翌日。
父の研究室に行くと、ぱっと顔を輝かせた神長さんに詰め寄られた。

「弁当は」

「はい、どうぞ」

「うん」

私の手からお弁当を受け取ると、椅子に座り直してお弁当ハンカチをほどいていく。

「この謎が解けないと、研究に集中できないんだ」

「はぁ」

そんなにたいそうなことですかね?

今日も神長さんはいただきますと律儀に手を合わせるとお弁当の蓋を開けた。
玉子焼きを箸で掴むと、ぱくりと一口。
もぐもぐと口を動かしごくりと飲み込むと、満足そうに笑う。
今度は唐揚げを摘むと、一口。

「うん。
これ、これなんだ。
この微妙に塩の利きすぎた玉子焼き。
味のしみがいまいちな唐揚げ」

いや、それって全然褒めてないですよね。
むしろ、けなしてる?

「この、ほんの僅かに微妙な味が、なぜかおいしい」

すみませんね、微妙な味で。
これでも料理、頑張ってるんだけどな。