突然話しかけられて、びっくりしたと同時に初めての人と話すことが苦手な私はぺこりとお辞儀してその場を去ろうとした。
今考えると最低だったなぁなんて思うけど、あの時の私にはあれが精一杯。
私が後ずさりしていると、彼が笑顔でこう言った。
「いきなり話しかけてごめんな。でも言わずにはいられなくて。
キミも俺もきっとこの桜と一緒にサクラサクよ。大丈夫。
この桜が散る頃には一緒に入学しような」
それだけ言い残して少し照れたような笑顔で手を振りながら走っていく彼の後ろ姿を見つめているうちに、私はこの学校に入学したいという気持ちが強くなった。
あの時見つめた爽やかな黒髪の少年が西野 陽斗くんだと知ったのは入学してすぐ。
隣のクラスで完璧な男子がいると話題になった時で、気づいた頃にはもう好きになっていた。

