「おはよう」

...おはよう。
そう言葉に出そうとするが、寝起きの喉は乾いて水を欲していた。
んん、と喉を鳴らして立ち上がる。
彼の元へ歩み寄った。
腰の痛みに少し振らつきながらも、よたよたと歩む。
不思議そうな彼の顔が間近に来たところで、一つ笑みを浮かべて見せた。
より一層ぽかんとする彼。
そんな彼を愛おしいと思いながら、右手にあるコップを掴んだ。
「あ...」と言う声に聞かないふりをして、水を含んだ。
喉が潤ったことを確認できると、私はコップから口を離してもう一度彼を見た。
「おはよ」
声が震えた、なぜだろう。
知っているけれども、知らないフリをした。
私はこんなにも悲しいのに、あなたは何ともないんだね。
誤魔化すようにコップを机に置くと、彼は私を押し倒した。
キスの雨が降る。
あぁ、前言撤回。私たちは悲しくないフリが得意だね。
キスを受け入れ、それに応える私の身体に、彼が触れた。
その体温に体が軽く跳ねる
土曜日、朝の6時。
今日は何も考えたくない。
「あっ...」と口から漏れた言葉に私たちの身体は熱を増す。
今日くらいは、忘れさせて。
明日、あなたがいない生活なんて過ごしていたくない。
このまま時間が止まればいいのに。