夜明けを待つ月

私の好きな人は王子様だ。
身長が高くて、運動ができて、顔もそれなりに整っていて、紳士で、ノリが良くて、優しくて。
とてもいい人だ。
、、なんて。
彼は良い人でありながらも、とても"良くない"人だ
なぜかというと優しすぎるから。
街で困っているおばあさんを手助けし、
他校の女の子の落としたハンカチを届ける、
転んだ子供に優しく絆創膏を貼り、
電車で妊婦さんに席を譲る。
それだけに飽き足らないのが王子だ。
誰にだって平等なのだ。
同じように接し、微笑みを向ける。
ずるいひとだ。
私も、彼の優しさに惹かれてしまった一人。
あの優しさに触れてしまうと、勘違いするのも当然であって。
何も逆らえないのがまた悔しくもあった。

そんな彼を思っていて気づいたんだ。
悲しくも、受け入れなければいけなかった。
彼には心から好きな人がいること。
ふと顔を見ると、誰かを見つめていること。
手を振り合っていること、私の知らない熱を持った目をしていること。
心が痛んだ、辛かった!それでも、叫び出したいほど君を想ってしまった!
私といるのに、私がそばにいるのに、どうして真っ直ぐと見てくれないの。
彼の彼女に心からなれるわけない、そう痛感した。
その子の場所は奪えないらしい。
あぁ、、
私が思っていたよりも君が好きだったみたいだ。
本当は軽い気持ちだったんだ、近くにいたら少しは意識してくれるかなって。
そんなことはなかった。

私との約束に一時間遅れても喜んで待ってくれていたところを見たときは、複雑な気持ちだった。

誕生日に独り占めで一日開けてくれていたこととか。
朝、何も言わずとも習慣化した待ち合わせだとか。
仲割れする心配を何も考えずに軽々と話しかけられるとか。
彼の家族と仲良くできるだとか。

私が何を持っていても意味がなかった。
その子には私のないものがあった。
どうして隣りにいるのに、私じゃないの。
私が彼女と幼馴染、どちらも持っていたら、少しは変わってくれるのかな。


冷たい温度をしたコンクリートを重い足で踏み上げる。
今日はこの後友達とーーーー。
「あっ、王子だ。おうー」

 「王子っ!!」
透き通った綺麗な声。
 「ん?あれ、どうしたの?」
 「あのね、私っ、、!」
あぁ、またあの子だ。
 「その、、っ、ぐすっ、、」
なんだか心が気まずくなって影に身を潜める。
女の子が鼻をすする音がした。
 「泣かないで?!どうしたの?」
 「うっ〜、、っ、すき。」
ドクンッと心臓が跳ねる。
いやだ。
そうわかっているのに足が動かない。
 「俺も好きだから、泣かないで、、」

「、、、っ、なんでなの。」
滲む視界の端から見えた二人は、抱き合っているように思えた。
その場から逃げるよう、踵を返した。