私はどこへでも行ける。

頭が特別いい訳では無いけれど、悪い方ではなかった。
誰かの笑顔を見ることが好きだった。
困り事があるならできるだけ助けたかったし、落ち込むことがあるなら支えたい。
喧嘩など起こさず、平和に穏便に。
そのためなら害のない人間だと言うように、貼り付けた笑みをも浮かべる。
信じるものは多く、誰かの背中を追う。
けして自分は先頭にはならない。
一歩後ろで、そっと、息を殺して、邪魔をせず。


それが間違いだったみたいだ。
私は面白みもない人間になり、
アイデンティティを見失い、
前進む者たちにおいていかれ。

あれ。
まってよ、どこへ行くの。

陰ながら支えているつもりだった。
それとなく背中を押した。
だった、だったはずなのに。

相手からすれば私の手助けなんて虫の息。
さっと払えば気にも止められない
嘘でしょう?
私がいなければ起こっていない。
私がいなければ仲良くなっていない。
私がいなければ壊れたまま。
なのに、なのになのになのに!
なんで誰一人も私を見てくれないの。


そっと、隠れていたのがだめだったのでしょうか?
誰かの道を掃除して歩く、そんな生き方は報われないのですか。

あ、れ
あれれ、おかしいな。
私はどこへでもいけた。
だって人の後ろを歩いて支えて、そうすれば人と一緒に見れる景色があって。
それで、それ、で、、、?


暗転


私はどこへでも行ける   ?



体が動かない。
えいっ、と動かしているつもり。
宙ぶらりんになった手は、やる気のなさそうにぽて、と落ちた。

「あ、、」

情けなく鳴いた声はかすれていて、小さくて。
思うようにならない。
朝も夜も昼も何もわからない。
怖い。怖い怖い。

頭が悪い、何も考えられない。
浮かぶものは不安ばかり。

誰かの幸せそうな笑顔。とっても憎い。
わたしも、それがほしい。

困りごと?私に聞かないで。
余裕がないの、優しくできない。

喧嘩、はは、上等。
私が気に入らないなら近づかないで。

あは、ははっ
力のない笑みはもはや狂気さえ感じる。

誰も信じない。
どうせ見捨てられるのなら、何も望まない。

誰かに好かれたい。
神のように崇められ、称えられたい。

一歩後ろで、そっと、息を殺して、邪魔をせず。



私は壊れていく。