私は暗い道を1人黙々と歩いていた。
ただただ、歩いていた。

私は、私が歩んで行く道は行き止まりだらけの真っ暗なものなんだと思っていた。
ある時突然、僅かな光が差した。
本当に小さな光だった。
私はその光に誘われた。
でもその光に向かってはいけないと思った。
どうしても行きたくなった。
ほんの少しだけ足を進めたその瞬間、
誰かが手を差し伸べてくれた…。


私は魅力も何もない
ごく普通の普通の人だった。
友達も多いわけでもなく
どちらかと言えば、1人の時間が多かった。
やりたい事を見つけていた訳でもなく
普通に働いて普通に生活していた。
私には少し前まで一緒に住んでた彼がいた。
彼とは何かが噛み合わず
何度も何度も喧嘩をして
ついには彼からの暴力で
2人の関係は終わった。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

私は彼だけを生き甲斐として生きていた。
彼との日々を失ってからというもの。
私には何も見えなくなった。
目を開いている時は
常に視界が水混じりに歪んでいて
それ以外は視界には何も映っていなかった。
ついには水混じりの視界になることもなく
ただ呆然と先を見るだけの日々になっていた。


何も感じない日々。
私は喜怒哀楽全てを失っていた。
自分の布団に潜り込むことだけが心地良くて
布団と体が一体化しているようだった。
でもそれが何よりも心地良かった。
しばらく人と会うことも避けた。
とてつもなく居心地の良い自分の布団で
のんびりと過ごしていた。



そんなある日
静まり返った部屋に
『ピンポーン』
インターホンが鳴った。
誰とも関わってない中で、誰だろうと。
そっと覗いてみた。
彼だった。
こんな時に何を伝えに来たのだろう。
復縁したいと言われた。
私はとてつもなく迷った。
でも彼と戻る選択はしなかった。
何だかどうでも良くなった。
もう吹っ切れていた。
時間が解決するものなんだなと思った。
私はまた人と関わってみたいと思った。
深く関われなくたって良いから。

…と。


何となくインスタに
会える人が居るか
本当に興味本位で何となく集計した。
1番初めに『はい』を押してくれた人と会おう
またこれも何となく決めていた。

…あれ?
1番初めに『はい』を押して来たのは
話した事のある人だった。
まさか…ねぇ。
ダメ元で連絡してみることにした。

『いいですよ』
と、彼はすんなりと承諾してくれた。

あんまり関わったこともなかったので
この子不思議な子だ…なんて思った。
でも何となく楽しみだった。
人と会うのが楽しみだって思えるのは
いつぶりだろうか…。

その時私はほんの少し笑った。


彼と会うことになり
私は彼の元へ車を走らせた。


そして
彼と顔を合わせた。
彼は敬語で丁寧に話してくれた。
私もほんの少し緊張しながら話した。

ドライブしながら
たわいもない話をして盛り上がった。
なんだか自然に笑えた。
彼も優しく笑ってくれていた。
彼の優しい笑顔を見ると
少し胸が鳴った。

彼と居る時間は
温もりを感じ、居心地が良かった。

帰る時間が刻一刻と迫るにつれ
『帰りたくない。』
私はその言葉を言い続けていた。

こんなはずではなかったのに。
自然と彼を必要としていたのだろうか。
分からなかった。

帰る時間になった。
私は心寂しくなった。
付き合っていたわけでもなかったけれど
2人抱き合ってキスをした。
胸の音が大きく、鳴り止まなかった。
胸が音をたてると同時に
心が満たされていった。

家に帰るまでの道のりも
家に帰ってからも
胸の音は鳴り止まなかった…。




私の見た彼は
私が歩んできた暗い道の遠くの方にある
僅かな光のようだった。




彼とのLINE。
また会う約束をした。
正直、良いのか分からなかった。
あんなにも輝いているものに
私が手を出していいとは思えなかった。
でも彼には会いたかった。


会うだけ。会うだけだから。
あの輝きは
私の手に入るものではないから。
触れてはいけないものだから。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


彼とは何度も会うようになった。
連絡も沢山取るようになった。



ある日私は
LINEでの会話ではあったが
彼と深い話をする事が出来た。
私の過去も、私という人間の事も話した。

彼は一つ一つ全てを受け止めてくれた。
もうこの時私は完全に彼を必要としていた。
でも私が触れてはならない光だった。

分かっているのに。

好きになっていた。

完全に恋愛不信なのに
曖昧に『好き』を抱いてしまっていた。
絶対いけない事だと分かっているのに。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

お互いのLINEに
『好き』という言葉が増えていった。
彼氏彼女という関係では無いものの
『好き』という言葉が増えた。

たわいもない会話に
『好き』が増えた。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

2人のLINE
いつも通りたわいもない会話をしていた。
彼がさり気なく
『片思いかなー』と言った。
私はそれに対して
胸が飛び跳ねるように鳴った。
恋愛不信なのに恋心を抱いていたから。

彼とは向き合いたい、そう思った。
嫌われるのを覚悟で私は
『ちゃんと好きになっていいの?』
と聞き返した。
彼は
『いいよ?信じてもらえないかもしれないけど』
と言った。
私は
『恋愛不信、こんな私が嫌いなの。』
正直に伝えた。
『そんなゆなも好きになれるよ』
『俺が変える。』
彼はそう返してくれた。


その言葉で私は彼を信じようと思った。
信じたいと思った。
最悪状況に居た私を。
真っ暗な道に立っている私を。
僅かな光に照らされたくて
ほんの少し進んでしまった真っ黒な私を。
光から手を差し伸べて私を光照らした。
あまりにも輝いていて
私には眩しすぎた。
目をかすめながら見た先には
彼がいた。
そう、
真っ暗な道から
救い出してくれたのは彼だった。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

彼を信じると決心し
彼に気持ちを伝える。

私は彼に会いに行く。

たわいもない話から始まって
自然と2人で笑っている。
いつも通りの2人の流れだ。


2人抱き合ってお互いの温もりを感じ
満たされていた。
私は伝えなきゃ。と思った。

『私、あなたなら好きになっていいんだって思った。信じたいって思った。』

2回ほど同じことを言った。

彼は私の伝えたいことを悟るかのように

『ゆなの彼氏が俺でよければ』

と言った。

私は、あなたがいいんだと伝えた。

お互いに
『宜しくお願いします』

2人は付き合うことになった。
私の人生がまた光照らされた。
彼が光照らしてくれた。

私にとって
彼はかけがえのない存在となった。

彼は私を暗い道から救ってくれた。
私の彼氏であり、私のヒーローだ。
付き合えたこの瞬間
大好きが溢れた。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

付き合い始めてからの毎日は
まるで夢のような日々だ。

毎日必ず好きだと伝え合い
幸せの一言ではおさまらないくらいの
幸せで溢れていった。

私は彼を、愛している。
心の底から必要としていて
心の底から愛している。

きっと。
いや、この先変わらずずっと。
私の彼への愛は消えることは無いだろう。

私を抜け出せない闇から救ってくれた彼を
一生かけて幸せにできるように。
彼に恩返しできるように。

私が彼に出来ることは
彼を一生愛し続けること。

だから私は彼を一生愛し続ける。

彼との未来を見ている。

彼が私を守り、救ってくれたように。
私も彼を守り救いたい。

彼を一生愛し
彼と家庭を築き
小さな幸せを温めて
大きな幸せを掴み
嘘偽りのない笑顔の絶えない
そんな2人で
いつかは家族も増え
また幸せを掴む。

この先も彼と2人で。
毎日をかけがえのないものに。