久しぶりの教室。
久しぶりのクラスメート。
みんな日焼けしてなんだか華やいでる。

「よぉ、ナナ」

そう声をかけられドキッとした。

勇磨だ。

「雰囲気変わったな。痩せた?
それになんか日焼けしてね?」

そう言って私を観察する。

なんだろう。異様にドキドキする。

それに嬉しい。

勇磨こそ、なんかたくましくなってる。

「勇磨、大会はどうだったの?」

満面の笑みとガッツポーズで答える。

「優勝!」

やったじゃーん!と
勇磨をペシペシ叩いて褒めちぎって
いつもの私に戻った。

ユーマーズが騒いでる。

あーこの感じ懐かしい!

「あのさ、俺、ナナに聞きたいことがあってさ」

そう勇磨が切り出す。

何?

ちょっと言いにくそうな勇磨。

「いや、あのさ、先輩がナナを見たっていうんだけど。
でも人違いだと思うんだよな。」

なんか歯切れが悪い。

「何?どこで見たの?」

「夜さ、南区の繁華街で、
派手な男達とナナが一緒にいたって。
あのさ、3組の友永ってあいつとか
金髪の3年とかもいたって」

あ、それ私だ。

でもそう言う前に勇磨が続ける。

「ナナがそんな男とつるんで遊んでるわけないって、信じてるけどさ。
ごめん、変な事聞いた」

いや、それ、私だから。

繁華街で男とつるむって言葉にすると強烈だけど、ダンスの帰りに送ってもらっただけだし。

南区のトモの家は剣道の道場やってるから、
最近はそこで集まって踊ってる。

それに格好は派手だけど、中身は紳士だし。

そんな男呼ばわりしないでほしい。

でも、そう説明する前に勇磨は、
バスケ部の友達に呼ばれて行っちゃった。

ちゃんと説明しないと。

勇磨に誤解されるのも嫌だし、
仲間を悪く言われるのもキツイ。

全校集会が終わりHRも終わり、
また残りの夏休みが始まる。

久しぶりの学校に懐かしさを感じながら、
また休みへの期待も膨らんで各々解散していく。

私もまた練習だ。

でもその前に勇磨に話さないと。

声をかける前に、先に勇磨に呼び止められた。

「ナナ、俺、大会終わってもまだ試合が沢山あってさ。
この後、合宿もあるんだ。また会えなくなる。
だから今日はもう少し一緒にいたい。ダメ?」

真面目な顔をして聞く勇磨。

私のヘアピンに触れる。

また心臓が痛くなる程ドキドキする。

これから練習なんだよ、私。

「私、今日はダメなんだ。でも少しなら。
私も勇磨に話したい事があって。」

途端に期待した眼差しで私を見る

「何?大事な話?早く言って」

あれ、どうしよう。勘違いしてる。

告白の返事だと思ってるよね、きっと。

しかも期待してる。

どうしょう。

困る私に今度は勇磨の表情が曇った。

「あ、俺、はしゃぎ過ぎたな。ごめん。話って何?」

逆に落ちてる勇磨に何も言えなくなった。

違うよ。

さっきの繁華街の話だよ。

だけど

「ナナ、俺の事、嫌い?」

そう切り出された。

「嫌いじゃない」

そういう私に更に続ける。

「まだツバサが好きなの?」

それも違う。

でもだからって勇磨が好きかと聞かれたら、
まだよく分からないし、勇磨といるとドキドキして落ち着かなくて怖い。

情緒不安定になる。

それは好きとは違うんだと思う。

ツバサくんの事はもう考えてないとそれだけ伝えた。

「俺は真剣にナナが好きなんだ」

真っ直ぐに向けられる目。

ドキドキが止まらない。

また逃げたくなる。

どーしょう、勇磨が怖い。