「ナナ、遅かったな」

久しぶりに聞く勇磨の声に体が熱くなる。

急いで勇磨に駆け寄った。

「どうしたの、勇磨。待ってた?」

部活のユニフォーム姿で、
タオルを首にかけてる勇磨。

「そっちこそ、どうしたんだよ。
今日、学校に来てたんだろ。
誰かが言ってた。
体育館に来てたって。
俺に会いに来たの?」

そう直球で言われると照れる。

さっきのチカとの話もあるから、
余計に意識してしまう。

「いや、あの、
たまたまチカとランチする約束してて」

勇磨はちょっとむくれる。

「なーんだ。嬉しかったのに」

その言葉にまたドキドキが止まらなくなる。

どうしたんだろう、私。

また怖くなってくる。

「でもなんで体育館にいたの?
やっぱり俺を見に来たんでしょ」

上目遣いに私を覗きこむ勇磨。

思わず後ずさりして目線を逸らした。

「うん、まぁ。元気かなと思って。」

白状した。
勇磨はとびきりの笑顔で喜ぶ。

「ナナ、会いたかった。
だけど、俺、来週の大会のメンバーになりたくて自分を戒めてたからさ、我慢してたんだけど。
ナナの名前、聞いたらダメだった。
会いたくて来ちゃったよ。」

そう言って私に近づいて髪に触れ、
ヘアピンを触る。

「まだ、付けてるんだ、これ」

勇磨。

ダメ、心臓が爆発する。

「俺、頑張るからさ、だから、
パワーをもらってもいい?」

そう言って頬を傾けて、
私にキスをしようとした。

ギリギリで我に返り避け、下を向いた。

勇磨はちょっと間をおいて、
そのまま私のおでこにキスをした。

おでこが熱くなる。

胸が熱くなる。

勇磨といると心臓がドキドキして落ち着かない。

「ナナ、俺さ」

そう言って私の肩に手を置く。

落ち着かなくて怖い。

ドキドキが止まらない。

私が私じゃなくなる。

余裕がなくて怖い。

どうしちゃったんだろう、私。

前はこんな風にならなかった。

「俺、毎日、ナナに会いたくてなって、
たまらなくなって。ツライ。」

最後は甘えるような目つきになる。

思わず勇磨を抱きしめたくなって、
そんな自分に驚いてグッと堪えた。

「ナナは?ナナは俺に会いたいって思った?」

そう聞かれ、またドキドキが押し寄せる。

「そ、う、だね。
チカも勇磨も忙しいそうで。
元気かなって話したいな、
とは思ってた。」

ちょっと不満そうな勇磨。

「今井チカとセットか。それじゃあ
友達に会えない寂しさって感じじゃん。
俺のとは違う。」

ちょっと笑った。
勇磨、スネキャラになったんだ。

「笑うな」

いや、笑うとこだよね。

「でも今井チカとは会ってるんだろ。
来週の花火大会も一緒に行くって、
言ってたじゃん。」

その言葉で思い出した!

あーそうだ、チカにドタキャンされたんだ。

花火大会は彼と行きたいって!

まぁ、いいけどね、私もダンスで忙しいし、
でもチカめ!

私のムクレ顔に気がつく。

「なんだよ、その顔は。
花火、浴衣着ていくの?
ミアンもリノもすげぇ気合い入ってるよ。
アイツらに狙われた男が気の毒だ」

そんな、言い方。

でも、ミアンちゃんとリノさん、
2人揃ったら後光がハンパないな。

「ミアンちゃんから写メ来たよ。
ピンクの浴衣、すごく似合ってた。
あとリノさんもね、会えたらいいねって。」

またスネて感じ悪い勇磨。

「なんで、アイツらと連絡してんだよ。
俺にはしないのに」

ブツブツ文句を言う。

ちょっとおもしろい。

子どもみたい。

「勇磨も行けばいいじゃん。
花火、見てきなよぉ」

その言葉に余計にふくれる。

「俺は練習あるし」

だよね。

なら諦めて集中しなさい。

「ひでぇーな。自分だけ楽しんで来るのか。
ナナ、浴衣禁止。
あと髪とか服とかボロボロで行け。」

は?

「何それ。私だって、
ミアンちゃん達みたいにかわいくしたいし。」

ボロボロって。

「元が違うんだから無理だろ。
ナナはナナの力量で、背伸びすんなって」

勇磨、私を怒らせたいの?

思いっきり睨んでやった。

「元が違うのは認めるけど、
浴衣だって似合うって言われたんだから。
かわいいって言われたんだからね!」

今度は勇磨が私を睨む。

「誰に言われたんだよ」

あ、それは。