とうとう、高校生になって、
初めての夏休みになった。

が、思いのほか暇を持て余し、その度に、
自然とショッピングモールに向かってた。

あの日見かけたダンスチームが、
頭から離れない。

毎日こっそり通うようになって、
もう1週間もたった。

ただそこで彼らのダンスを見て過ごす夏休み。
自分でも不思議だけど勝手に足が向く。

「ねぇ、毎日見に来てるよね」

そう突然、声をかけられた。

ショートカットの背の高い女の子。

たぶん、年上なんじゃないかな。

ものすごく、大人っぽい。

美人だなぁと見とれた。

「いや、あの、通りかかっただけです」

そう言うと彼女はちょっと意地悪そうに笑って

「通りかかるって、毎日?
言い訳するって事はタツキの追っかけか」

ちょっと睨みをきかせて私を見る彼女は、
美人だからか余計に迫力がある。

怖い。

「どーしたミッキー」

踊ってた輪の中から、
1人の男の子が走ってきた。

他の子達もこちらを注目してる。

ミッキーと呼ばれた彼女は、
私を指さして大声で話した。

「この子、タツキの追っかけみたいだよ。
毎日こっそり見ててストーカかもしれない」

走って来た男の子がじっと私を見てる。

彼がタツキなのか?

観察するように、警戒するように、
目を細めてじっと見られた。

ヤバイ、完全にストーカーになってる!

「違います。すみません」

急いで逃げようとする私に彼が呟いた。

「ちび?」

そのあまりにも懐かしいアダ名に、
自分の事だと気がつくまでに時間がかかった。

「ちびだよね?えっと、ナナミでしょ?」

まじまじと彼を見る。

タツキって名前、どっかで。

記憶をたどる。

その時また輪の中から、
別の声がして女の子が走って来た!

「あーナナミだ!ねぇ、ナナミだよね。
私、アヤノ。覚えてない?
小学校の時に、一緒にダンスチーム組んだじゃん。」

そう言われて気が付いた。

そーだ、アヤノ!そして、タツキ!

同じダンススクールの仲間だった!

私は小学生だったけど、
中学生の年長チームに混ぜてもらってたんだ。

その時のチームメイト。

アヤノは1こ上でタツキは2こ上だ。

あー懐かしい。

「アヤノー思い出した!アヤノだ!懐かしい。
変わってない!タツキも思い出した!懐かしい!」

ポカンとしているミッキーと呼ばれた彼女をよそに、私達は懐かしんで盛り上がった。

話していくうちにアヤノとタツキは
ダンス好き仲間と集まって毎日練習したり、
時々イベントに出てる事を知った。

そして驚いた事にタツキもアヤノも
ミッキーと呼ばれてたみゆきさんも、
私と同じ学校だった。

もう1人「おい、トモ!」と呼ばれ来た男の子も同じ学校で、しかも同じ学年だった。

学校にダンス部がないから、
こうやって他校の子も交えて踊ってるらしい。

ひと通り懐かしみ、
また見に来てもいいかとお願いして、
今日は帰る事にした。

タツキとアヤノは、
私をダンスに誘ってくれたけど、
断わった。

私は辞めたんだから。

でもまた明日も見に行く!

何でかな、ダンスは辞めたのにここに来たい。

心の奥底に眠っていた何かが動き出した。