「工藤、お前、大丈夫なのか?」

顔面蒼白で息を切らしているツバサくん。

「ああ、まぁ」

勇磨の言葉をそのまま取れない。

「あ、いや、ごめん。
俺、デリカシーないな。
大丈夫じゃなくてもそう言うしかないな。
あ、れか。
入院はどれくらい?治るんだよな。
あ、いや、ごめん」

慌てふためくツバサくんに、
私と勇磨は一瞬目を合わせて
爆笑した。

カスミちゃんがそんな私達を見て、
ツバサくんに囁く。

「ごめんごめん、ツバサ。心配かけたな。
俺は元気。ナナの勘違いだよ。
俺は仲間の付き添いで来たんだ。
それよりお前の肩はどうだったんだよ」

聞かれたツバサくんが、
肩をぐるぐる回して見せる。
慌ててカスミちゃんがその腕を掴んで止める。

「大丈夫だった。また投げられる」

良かった!

勇磨の膝から飛び降りツバサくんに駆け寄った。

「やったね!ツバサく」

両腕を掴もうとした時に、
後ろから引っ張られ、
勇磨に背中から抱きとめられた。

「俺との約束」

あ、触るな、ね。

あー勇磨、ウザっ。

カスミちゃんがケラケラ笑う。

「工藤くんってかわいい」

かわいいって?
これが?

「なぁな、工藤が無事で良かったね。
カスミちゃんが心配してたから。
なぁなが真っ青な顔して泣いてたって。
立ってられなくて座り込んでたとか聞いてさ。
工藤が重症で命の危機かと思ったからさ」

勇磨が爆笑する。

「勝手に殺すな」

ツバサくんも笑った。

「ふーん。でもさ、ナナが俺の為に
そんなに取り乱してくれるなんて、
思わなかったなぁ。
腰抜かす程、俺が心配だったって事は、
やっぱり俺の事が好きなんだよね。」

またぎゅっとする。
ツバサくんが赤くなる。

やめてよ、純情なツバサくんの前で。

「え、違うの?
だって私、ナナちゃんが、震えながら
工藤くんのところに駆けていく姿見て、
ツバサくんの病院に行こうって決心したの。
好きだから側にいたいって。
好きな人がツライ時には側にいたいから」

ツバサくんの腕に絡んで頭を寄せる。
照れるツバサくん。

なんだよ、かわいいなぁ。

何、照れてるんだよ。

幸せなんだな、ツバサくん。

そんな顔、見た事なかった。

ちょっとヤキモチも感じちゃうよ。

そんな私に気が付いたのか、
勇磨が不機嫌に言った。

「ツバサ、もう帰れ。
お前がいると俺が落ち着かない。」

えーなんで?
すぐ怒るんだから。
と、ツバサくんがブツブツ言ってたけど、
カスミちゃんが可憐な笑顔を私達に見せて
2人は帰って行った。

「じゃあ、さっきの続きな」

正面から私をまっすぐに見た。

「ナナ、ありがとう。
俺、本当に嬉しかった。
俺はナナが好きだ。」

勇磨の真剣な瞳にまたドキドキがMAXになる。

なんだろう、この気持ち。

きゅーってなる。

「私、」

言いかけて勇磨にキスされた。

2回目だ。

頭が真っ白になる。

なんだ、これ。

「いいよ、分かってる。
ナナも俺が好きだ、絶対。
でも自分で気付いてね」

なんだ、それ。

どうしたらそうなるの?

全く、中2病ってやつは!

しかもしれっとキスしたな!

我に返った!

許さない!

デコピンしてやった。

上手く入ったようで、
勇磨が座り込んで、
おでこを押さえる間に逃げた。

もう、帰ろ。

なんだったんだ、今日は。

まだドキドキする。

「待て待て、悪かった」

そう言って追いかけてくる勇磨。

「バカ勇磨」

私の顔を覗き込んで悪い顔をする。

「やっぱ、俺の事、好きだろ」

なんでそうなるかな。

「いや、なんとなく。まぁいっか。
ナナが認めるまで俺は、
全力で落としにかかるからな」

なんだ、それ。

「認めたらどうなるの?」

その問いにもっと悪い顔をする。

「そんなの決まってるじゃん、
2人で落ちるの。」

なんだ、それ。

「あちぃなぁ。夏だな。
よし、大会に向けて頑張るか!」

横で空を見上げて叫ぶ勇磨は、
夏が似合う。

そっか、もう1学期も終わる。

なんか色々とあったな。