定期テストも終わり、あと数日で夏休み。

チカは夏休みのほとんどが部活で、
あまり会えない。

でも花火大会には行こうと約束した。

去年の花火はツバサくんと2人で見た。

クラスの友達を含めグループで行ったけど、
途中ではぐれてツバサくんと2人になった。

あの花火は一生忘れないと思う。

あー、海も行きたいな。

あとプール!

家族で北海道にも行くんだったー。

夏休みって最高だな!

「おい、何、1人で笑ってんだよ、怖い」

隣の席の勇磨。

やば、笑ってたんだ。

「だって、もうすぐ夏休みじゃん、
すごくテンション上がる!」

ふーん。と、ちょっとテンション低めの勇磨。

「なんで?勇磨は楽しみじゃないの?」

そう聞く私にちょっと不機嫌に答える。

「だって、俺、ほぼ毎日部活。合宿もあるし。
あー海とか行きてぇー」

ご愁傷様。

「ナナ、ひどいな、
自分1人だけ楽しもうとしてんのな」

だって私、部活してないもん。

「でも8月に大会あるからさ。
どーしてもメンバーに選ばれたいんだよな。
だから全力で頑張る!
ナナと遊んであげたいけど我慢してね。」

我慢って。どっから目線!

でもふと思う。
そっか、学校が休みだと、
勇磨にも会えないんだな。

誕生日の日、2人で観覧車に乗った。

あの日から、私の中で勇磨に対する気持ちが、
変わってきたような気がする。

いつも一緒にいたい。

一緒にいると楽しい。

でも反対に怖くもなる。

ドキドキして焦って自分じゃいられなくて。

これは何なんだろうか。

長い夏休み、勇磨に会えないのはつまらない。

でもホッとする。

「あ、それ」

勇磨が私の頭を指差す

ハッとして思わず手で隠した。

「なんで隠すんだよ」

そう言って私の手を掴んだ。

「うん、似合ってる」

満足そうに頷く。

誕生日に勇磨からもらったヘアピン。

ピンクの貝殻が付いてる。

「ナナ、ピンクの貝殻欲しいって前、
泣いてたからさ」

ちょっとバカにしながらくれた。

あの時、海で見つけてくれた貝殻に似てる。

すごく気に入った。

だけど、ちょっと恥ずかしい。

「夏休み中、またツバサがふざけた事、
言ってきたら言えよな」

そうは言っても勇磨はすっかり部活モードで、
放課後は急いで部活に走っていく。

私だけ置いてかれちょっと寂しい。

何かしたいけど、
私って何の興味も趣味もない。

あーあ。

今日は何しよう。

やさぐれたまま、服でも見ようかなと
ひと駅先のショッピングモールに出掛けた。

もう気分は夏!夏!

そして、セール!

あれもこれも可愛くてテンション上がる!

安くなってる服も多くて、
欲しいものがいっぱいありすぎる!

これはママを連れてこないと。

青いガラス玉のキレイなピンを
ひとつだけ買った。

本屋を見たり、あてもなくぶらぶらする。

あー暇。

これが2ヶ月弱続くのか。

なんか憂鬱になる。

もー帰るか。

外はすっかり暗くなっていた。

駅に向かおうと、モールの出口を目指す。

ふと高校生くらいの派手な、
男女のグループが溜まっているのに気付く。

不良?怖い。

ささっと通り過ぎよう。

横を通過した時に、おもむろに音楽が流れた。

驚いて振り返ると、
彼らがショーウィンドウを鏡にして、
踊り出した。

あーダンスチームか。

そのまま通り過ぎるつもりだった。
なのに、足が動かなくなった。

ダンスナンバーに合わせて踊る人達が、
ものすごく楽しそうで素敵で、
すっかり目を奪われた。

一瞬で惹きつけられた。

でもすぐに思い直して歩き出し、
足早に駅に向かった。

私も子どもの頃、ダンスを習っていた。

中学生になり辞めた。

もう何年もダンスから離れてたから、
踊ってる人達を見て、
こんな気持ちになるなんて思わなかった。

心を奪われ目が離せない気持ちと、
どこか後ろめたい気持ち。

もうダンスはいいや、飽きたんだ私。

そうだ、やめたんだよ。

私には関係ないし、
もう会う事もないだろうし忘れるだろう。

どこか逃げるような気持ちで走って家に帰った。

そんな帰り道、カスミちゃんと会った。