勇磨。

勇磨は何でもお見通しだな。

私がまだツバサくんを消せないのも。

でもツバサくんに迷惑かけたくないって、
思ってるのも。

勇磨の優しさに甘えて流されてる事も。

「自分を抑えなくていい、
好きなら奪っちゃえよ。」
その言葉で逆に自分の気持ちに気付いた。

私、奪うなんて出来ないな。

今更、そんな事できないし、
そこまでの勇気もないし、
勇気があるないの問題じゃない。

私の中でツバサくんの事は納得してる。

告白できてちゃんと失恋して納得した。

時々心が動くけど、
どーしても欲しいのとは違うカタチになってる。

ずっと片思いしてたから、
終わりにするのが怖かった。

好きだって心が慣れて、
新しい一歩が踏み出せないでいた。

私が1番望んでいるのはツバサくんの幸せだ。

笑顔を守りたかった。

私がたくさん笑わせてあげたかった。

だけど、もうおしまい。

これからはカスミちゃんに、
笑顔にしてもらえばいい。

私も私の為に笑顔でいたい。

はぁー私、何してるんだろ。

この動画、すごくいい。

チカに感謝だ。

今、したい事が頭に浮かぶ。

私が私のために笑顔になるには。

学校に行こう。

勇磨を引っ張って観覧車に乗るんだ!

それで本当にツバサくんの事は終わりにしよう。

私はまた学校まで逆戻りで走った。

今日はものすごく走る日だな。

学校に戻り体育館を目指す。

コートの中でクルクルと身をかわし
ゴールを目指す勇磨がいた。

ゴールを決めて仲間とハイタッチをする。

いつもの勇磨。

先輩が私に気付き勇磨に目線で知らせた。

勇磨の視線が私を捉える。

瞬間、シューズをキュっときしませ
私に向かって走ってきた。

「ツバサは?」

私はカバンの中からタオルを出して、
勇磨に投げた。

「会ってない。やめた、会うの。
それより勇磨、観覧車、行こう!」

勇磨の瞳が明るく輝いた!

「やったー」

絶叫してガッツポーズをする。

私は恥ずかしくなって周りを見渡す。

ファンクラブが睨みをきかす。

タオルで汗を拭きながらコートを振り返り

「先輩、早退します」

そう言って手をあげる。

「おーがんばれ!良かったな」

先輩達に見送られ体育館を出た。

勇磨の着替えを待つ間、
南さんが話しかけてきた。

「今日の工藤くん、最悪だった。
ものすごく荒れてたかと思ったら、
塞ぎこんだり時々悲しそうで、
でも急にハイテンションになったり。
全部、木下さんのせいよね。
私達の工藤くんを1人占めするのは許せないけど、あんな工藤くん見たくないの。
分かるよね!」

そう言って走って行った。

分かるような分からないような。

勇磨と友達になるのを許してくれたのか?