テスト終わりの放課後は、
久々の部活で活気があった。

いいなぁ。青春っぽい。

「私も部活に入れば良かったなー」

その言葉に勇磨は振り向いて笑う

「だけどお前、運動神経ないじゃん!
体育委員なのに笑えるよな。
バスケのシュート教えた時も引いたなぁ」

ひどっ!

だけど反論できない!

「でも、体は柔らかいの!」

爆笑したままの勇磨。

「本当かよ、脂肪で柔らかいんじゃないの」

そう言って私の二の腕を触る。

「なんだよ、筋肉ないじゃん、ぷにぷに」

ひどすぎる!

腕を払って睨んだ。

「ごめん。ごめん」

でも、まだ爆笑してる。

「木下!」

校門近くで声をかけられた。

木村くんだ。

そのまま駆け寄って来て、
私の首にバサっと、何かをかけた。

驚いて見ると、
それはキャンディが繋がれた、
ネックレスだった。

そのキャンディを見てすぐに分かった。

「木村くん、これ」

木村くんは片手を挙げて、
勇磨にごめんと断りながら続けた。

「誕生日おめでとうだって。
全く、お前ら俺を使い過ぎだからな。」

お礼を言う前に木村くんは走って行った。

背中を見送りながら、
鼓動が早くなるのを感じてた。

一気にツバサくんの笑顔が心に広がった。

「あはは、何これ、作ったのかね」

取り繕う言葉が揺れる。

ツバサくん。

これはダメだよ。

パインキャンディが1つ1つ、
ラッピングされて、
リボンで繋がれてる。

なんで、こんな。

人がせっかく忘れようとしてるのに。

フタをした思いが溢れ出るのを感じた。
ネックレスをぎゅっと掴んで立ち止まった。

勇磨は何も言わない。

気を取り直さないと。

「もう、本当に。
ツバサくんってなんだかなって感じ」

上手く笑えてるんだろうか。

「いくら、コレ、好きだからって、
ネックレスにしなくてもね」

「こーゆうの売ってるのかな、
まさか作ったりしないよね」

なんか言って勇磨。

声が震える。

黙って私を見ていた勇磨は、
私の頭に手を置いて優しく言った。

「もう、いいよ、ナナ。
行って来いよ。
やっぱ、敵わねーなー。
俺、部活行くわ、また明日な」

何も言えずに見上げる私の髪を、
くしゃくしゃにして勇磨は走って行った。

その背中にぎゅっとなる。

勇磨!

私、また...。

また勇磨を傷つけた。

行って来いよって、どこに?

ネックレスを握る。
ふと、その中にメッセージを見つける。

―誕生日おめでとう、なぁな!―

ただそれだけなのに。

なんてことない言葉なのに。

その言葉に体が突き動かされた!

気がついた時には走ってた。

走って走ってツバサくんの学校の前まで来ていた。