定期テスト1週間前という事もあり、
あっという間に時間が過ぎた。

私も毎日遅くまで勉強した。

勇磨の得意な数学を放課後、
教えてもらったりした。

勇磨って勉強もできる!

なんかないのかなー欠点。

あ、性格か!

ツバサくんからは、あれから1回も連絡ない。

当たり前だよね。

でもそれでいい。

好きな気持ちは簡単には消えないから、
好きなまま時が過ぎるのを待つしかない。

テスト最終日、開放感と共に教室を出た。

「ナナミ!誕生日おめでとー」

振り返るとチカと中井くんがいた。

「きゃーチカ!中井くん!ありがとう」

2人にペシペシ叩かれて、
プレゼントまで貰っちゃった。

「誕生日動画も作っちゃった」

そう言ってチカちゃんお手製の
動画のプレゼントもしてくれた。

「後で見てね」

そう言って手を繋いで、
帰って行く2人の後ろ姿が、
惚れ惚れするくらいお似合いで、
羨ましくもあった。

「木下さん」

また呼ばれて振り返ると、
今度は南さんだった。

ちょっと緊張が走る。

また何か?

「ちょっと、何、警戒してるの?失礼ね。
木下さん今日、誕生日でしょ。おめでとう。」

そう言って南さんは紙袋を差し出した。

え?え?プレゼント?

嘘!

驚いて手を出せずにいる私に、
天使のような微笑みを見せた。

「今日くらい停戦。単純におめでとう」

えー!

嬉しい!

「ありがとう、南さん!いい人!」

そう言って受け取った。

「何、何?」

と包みを開けた途端、大絶叫した!

箱の中から溢れるようにヘビや虫が!

後から後から溢れる

「うわぁー!!」

廊下に響き渡る絶叫に、
隠れていたユーマーズも出てきて大爆笑する。

「バーカ!誰が祝うか!
あんたが私達の下駄箱に入れたオモチャ、
返しただけなんだから恨まないでよね。」

あー言われて気がつく。

これ、私の用意したオモチャの虫か。

やられた。

悔しい!

一瞬でも信じた!

慌ててオモチャを掻き集め、
ファンクラブを追ったけど、
とっくにどこかへ行っちゃってた。

あームカつく!

「おいっ」

その声の主はすぐに分かった。

「勇磨」

ちょっと怒ってる。

「何が先月だよ!
ナナの誕生日、今日だろ。
なんで嘘つくの?
そんなに俺に祝われたくないの?」

本気だか冗談だか分からない表情。

「だって」

そう言ってうつむく私の前に座り込み、
下から顔を覗き込む。

帰宅時間の廊下で目立つのか、
周りがザワザワし始め
中には悲鳴をあげて、
私達を見守る女子もいる。

「だって、何?」

何も言えないでいる私の両手を引っ張り、
自分の前に座らせる。

更にザワつき悲鳴も響く。

「あーうるせーなー、ちょっと来い」

そう言って勇磨は、
私の手を引っ張り走り出した。

キャーキャー騒ぐ中に私への罵声も加わる。

そのまま部室棟前に連れてこられた。

「勇磨、痛いって」

あわてて手を離す勇磨

「勇磨、ごめん。言えなかったんだよ。
だって、あのタイミングで来週って言える?
恥ずかしいじゃん」

全く意味が分からないように首を傾げる

「誕生日言うのにタイミングとかあるの?」

いや、ないけどさー。

分かってよー

「ごめん」

謝るしかない。

「悪いと思うなら今日1日つきあえ」

ちょっと睨むように私を見る。

「私はいいけど、勇磨、部活は?」

ちょうど、バスケ部の先輩達が通りかかった。

「いいとこに来た!センパーイ!
俺、今日彼女、落とすんで休みます」

そう叫ぶ勇磨!

また周りの女子がざわつく。

またファンクラブにボコられるなー。

先輩達に揉みくちゃにされながら、
激励され勇磨が戻ってきた。

「さぁ行こうか。」

私に好きって言ってくれた日から、
勇磨は学校でも距離が近い。

周りの目を気にせず私に触れる。

勇磨が私を好きだって、
聞こえるように言うから、
ファンクラブの嫌がらせも、
深刻なのはなくなった。

でも、このまま流されていいのかな。

もうすぐ夏休み。

夏休みも勇磨と過ごすのだろうか。

「ナナ、どうした?」

勇磨の真っ直ぐな瞳が私を捉える。

「ううん、なんでもないよ、どこ行くの?」

ちょっと悲しい表情をした勇磨。
でもすぐににっこり笑う。

「内緒」

かわいい!

いっか、流されても。

ワクワクしている自分にも少し驚いてた。