私、おかしい。

「好きだ。ずっとナナが好きだ」

何をしてても、勇磨の声が頭の中に
何回も響いて消えない。

「おはよー」

長い坂道でチカに会った。

「チカ、おはよー久しぶりだね」

チカは相変わらずだ。

「ナナミ、風邪ひいてたんだってね。
昨日、部活休みだったからさ、
一緒に帰ろうと思ったのに」

にっこり笑う。

「うん。でも、たまの部活休みは、
中井くんとデートなんじゃないの?」

チカの脇腹をつついてからかう。
爆笑しながらチカも応戦する。

「やめてーもうっ!違うの。
あのね、来週、中井くんの誕生日なの。
プレゼント選び、付き合ってもらいたくてさー」

きゃー

付き合って初めての誕生日かぁ

「初めての誕生日かぁ、いいなぁ。
そっか、彼氏のプレゼント選びかー。
きゅんきゅんする」

そう言って、
はしゃぎまくる私の背中から声がした。

「じゃあ俺の誕生日、祝ってよ」

すぐに分かってドキドキする。

勇磨!

ちょっと顔を見れない。

「おはよう、えっと、
ナナの友達の今井チカだよね。
俺、ナナの彼氏に立候補しちゃった」

ふーん、と含み笑いで私を見るチカ

「アイドルのあなたが何でナナミ?」

ちょっと意地悪な聞き方をするチカ

「でも、ナナちゃんの中で俺は、
アイドルじゃなくて、
自己満足のナルシスト男なんだって。
あと何だっけ?
中2病で意地悪でウザくて、
臭くて陰気野郎だっけ?」

根に持ってる。

小さい男!

「でも、ナナミには好きな人いるんじゃない?」

チカも煽る。

どーした、チカ!

「知ってる、ツバサだろ。」

慌てて、チカに説明した。

「違うの、チカ、あのね。
私、ツバサくんには振られたの、昨日」

チカはもの凄く驚いて、私の両手を握った。

「言えたの?好きって!おめでとう」

そう言って抱きしめてくれた。

うん、うん、ありがとう。

横で勇磨も笑ってる。

「ずっと好きだったもんね、中1から。
やっと言えたんだね。
ここからまた始められるね。
よしっ、工藤くん。
認める!ナナミを落とせ!」

ケタケタ笑って走って行った。

横で勇磨はガッツポーズしてる。

いつも通りの勇磨だ。

「やった!親友のOKも出たな」

本人のOKが出てません。

「勇磨の誕生日っていつなの?」

なんとなく気になって聞いてみた。

お世話になってるし、
近いなら何かお返ししたいなって。

「うん?俺?先月。」

え?終わってる!

爆笑する私に呆れ顔で勇磨は続けた。

「ナナって俺に全然興味ないな、悲しいよ。」

後から気が付いた事だけど、
ちょうど1ヶ月くらい前に、
ユーマーズが騒いでた、生誕祭って!

あれってどこかの文化祭かと思ってたけど、
勇磨の誕生日だったんだ。

バカバカしい!

何が生誕祭だ!

「来年の俺の誕生日はさ、彼女として祝ってね」

そう言って笑う。

またドキドキする。

なんか調子狂うなー。

「そういえばさ、ナナの誕生日っていつなの?」

そっちだって私に興味ないじゃん!

そう言う私に勇磨は反論する。

「は?男の興味は女と違うの。」

どう違うんだか。

「いつ?」

このタイミングで言いたくない。

だって、なんか言いにくい。

来週なんて。

言えない、絶対。

祝って!って言ってるみたいだし。

「私も先月」

片眉を上げて私を見る。

「ふーん。じゃあ、来年は2人一緒に祝うか」

来年の話を嬉しそうにしてる勇磨を見て、
ふと、本当に来年は2人で祝ってるかもなって思った。