ツバサくんが私を心配してくれて、
思いやって気にして守ってくれるなんて、
すごく嬉しい。

「大丈夫だよ。
工藤がファン達には一喝したらしいし。
俺も学校まで送迎するし、
俺、なぁなを守れて嬉しいんだ」

嬉しい。

このまま流されたい。

毎日毎日、ツバサくんに守られて過ごしたい。

ファンの子達に会うのが怖いって、
学校行くのも怖いって、
どこかで狙われてるかもとか言ったら、
ずっと守ってくれるのかな。

また、さっきみたいに抱き寄せて、
大丈夫だよって背中をトントンして欲しい。

嘘ついて怖がってツバサくんを縛れるなら。

でも、違う。

私、望んでない。

ツバサくんに守ってもらいたい訳じゃない。

私がツバサくんを守りたかった。

ツバサくんを笑顔にしたかった。

嘘で縛り付けて私の側にいてもらっても、
私の望みは叶わない。

「カスミちゃんは?何て言ってるの」

自分で聞いて、すぐに後悔する。

でもそれでも。

ツバサくんはちょっとツラそうに笑った。

「もう、ダメかもしれない。
でもそれはなぁなとは関係ない。
この前なぁなに色々言われて考えたんだけど、
男女でも友情は俺はあると信じてる。
俺は男でも女でも友達は大切だし、
俺より弱い奴なら守りたい。
彼女ができたからって、
友達と距離を置くのはおかしいよ。
もしそれでカスミちゃんが離れて行っても、
それは仕方ないんだと思うしかない」

ツバサくんって。本当にバカなんだな。

そんなの、通るわけがない!

だって友達じゃないんだから!

カスミちゃんも感じてる、私の想い。

知らないのはツバサくんだけ。

でも、それがツバサくんだ。

私は色んな手を使って、
ツバサくんを縛りつけられるんだよ。

友達って言葉で。

ツバサくんは自分に厳しいから私を、
見捨てないと思う。

でもそれは友達なんかじゃない。

私は大きく息を吸い込んだ。
そしてツバサくんに向き合う。

「ツバサくん、私ね、中学の時からずっと、
ツバサくんの事、好きだったんだよ。」

驚いて私を見るツバサくん。

「気がつかなかった?
そりゃそうだよね。
ツバサくんにはバレないように、
必死だったもん。
初めは弟のようでかわいくて、
苦手なパンケーキも、
観覧車も怖い映画も好きだって、
嘘ついても一緒に行ってあげたかった。
好きになってからは、
苦手なのがバレるのが怖かったしね。
でもね、それはすごく楽しかった。
いつか、ツバサくんが私を、
女の子として見てくれるんじゃないかって。
いつか好きになってくれるんじゃないかって思って」

涙が出てきた。泣くはずじゃないのに。

「ごめん、なぁな、俺」

うん、大丈夫。

「分かってる。
ツバサくんはそんなつもり全然なかったよね。
だから、男女の友情はないって事。
私には目的があった。
ツバサくんが好きだって。
カスミちゃんの言う事は正しいよ。
男はね、
何を置いても好きな女は守らないと!
好きな女の言う事は信じないといけないの!
私の前でみっともない姿見せてるみたいに、
カスミちゃんの前でもやっちゃいなよ!
好きなんでしょ。
野球バカなツバサくんが夢中になったんだもん、
もっと大事にしてよ、あきらめないで。
人を好きになるなんてめったにないんだよ、
友達作るより大変なんだよ、
分かったら早くカスミちゃんとこ行って!」

黙って聞いていたツバサくんの目に
涙が光った。

「ごめん、なぁな、俺、本当、バカだな」

「うん、バカ」

それだけ言ってベットに潜り込んだ。

しばらくしてベットから出ると、
ツバサくんは帰ったあとだった。

これでいい。

好きだって言えたんだし、これでいい。

サイテーな私とバイバイできる。

やっと、失恋できた。

罪悪感から今度こそ、解放された