それにしても...。

かわいいな、ツバサくん。

熱いお茶にびっくりしてる猫舌な所も、
甘いお菓子に感動してる所もかわいい。

全部、好きだ。

「なぁな。少し元気になったみたいだね。
良かった。昨日はどうなるかと思ったよ」

そう言ってまたお菓子を口に入れる。

かわいいなぁ。

「うん、本当にごめんね、
ここまで運んでくれたんだってね。
後、この間はヒドイ事を言ってごめん」

口をモゴモゴさせたまま、
ツバサくんが首を振る。

「ううん、いーの、いーの。
ウダウダしてる俺に、
わざと強く言ってくれたんでしょ。
なぁなは優しいね。それよりさ」

ツバサくんが何か言いかけた時、
ドアがノックされママが顔を出した。

「ごめんね、話し中に。
今ね、同級生の工藤くんって子が、
来てるんだけど、どうする?」

途端にこの状況に罪悪感を感じた。

お前、必死だな。

そう勇磨の声がこだまする。

名前を聞いただけで青ざめる私に
ツバサくんが気付いた。

「俺、話してくるよ。
おばさん、工藤くんとは俺も友達だから、
ちょっと話してきます」

うん。

なんだか今日はツバサくんが頼もしい。
急に立場が逆転したみたいだ。

「何、何?2人でナナを取り合う感じ?
ママは工藤くん推しなんだけど!」

は?

勇磨って年齢層広っ

勝手に騒ぐママを追い出したものの
心配になり窓から外を覗いた。

2人の姿が見えたけど、
声までは聞こえなかった。

しばらくして勇磨が帰って行った。

帰り際にこっちを見上げ目が合った。

慌ててカーテンを閉めて隠れた。

勇磨には会いたくない。

責められたくない。

もう、勇磨には何も言われたくない。

もう少しだけ、あと少しだけ、
ツバサくんといたいから。

ガチャっとドアが開いて、
ツバサくんが戻って来た。

カーテンの陰で震えて目をつぶる私を見て、
何か察したのかそのまま抱きしめて、
背中をトントンしてくれた。

息が止まるかと思った。

優しく抱きしめてくれるツバサくんは、
今までのハグとは違って私を包んでくれた。

「ごめん、思い出させちゃった?
工藤のファンにやられた事。
昨日、背中でずっとなぁな言ってたよ。
私ってウザくてキモくてブスらしい、
勇磨に色目使ってるらしいよ。
使ってねーしーって。
あいつら、ぶっ殺すって。
なぁならしくない暴言吐くからさ、
驚いた」

私らしくない、か。

ツバサくんの腕にグッと力が入る。

「だから、相当、怖かったんだなって。
で、工藤に連絡したら、
あいつがファンに色々聞いたらしくて、
ここに来るって言ったんだけど断った。」

私を下に座らせ、
自分も横に座ってツバサくんが続けた。

「だって、なぁなが勇磨嫌いって、
ずっと言ってたから」

あーそうか、言ってたかもしれない。

今も嫌いだし、会いたくない。

「だから、今も帰ってもらったよ、
なぁなの事は俺が面倒見るからって。」

ドキッとした。

ツバサくん、それ、本当?

ずっと、こうやってそばにいてくれるの?