寝不足で泣きはらしたせいか、
なんか頭痛もする。

午後はだるくて寒気もして、
体に力が入らなくなってきた。

ヤバイ、もしかしたら風邪かも。

昨日、寒かったし。

もう帰ろう。

職員室に寄ってから、早退する事にした。

中庭を通り抜けようとした所で、
全身に衝撃があった。

「え?」

気付いた時には、
全身びしょ濡れになっていた。

何が起こったのか分からず、
呆然と立ち尽くす私の上から声がした。

「あ、ごっめーん。
そんなとこにいたの?
気が付かなかったー。」

ケラケラ笑う女の子達。
南さんもいる

ユーマーズ!

バケツまで投げてきた。

「痛っ何すんの!」

怒鳴る私に彼女達が、
次々と罵声を浴びせる

「謝ったのに、ひどくなーい。」

「ブスがずぶ濡れー」

「もう工藤くんは来ないよ。
あんたの事、見損なったって言ってたし」

「ほんと、気に入らなかったんだよね、ずっと。
なにが勇磨、だよ!
色目使ってんじゃねー。
ムカつくんだよ、消えろ!」

「もう容赦しないからね」

なんで、私がこんな目に!

今すぐアイツらをボコボコに‥。

でも今は寒い。

頭、クラクラする。

ダメだ、全身に力が入らない。

早く帰らないと。

背中に彼女達の罵声は続く。

「逃げんのかよ!卑怯者!」

「ブス!2度と学校来んな!」

逃げてないしっ。

ブスでも、ないはず。

治ったらやり返すから、必ず。

でも、体に力が、入ら、な、い。

家まで、た、ど、りつけ、る?

校門を出た所で体がよろけ、
倒れそうになった。

寸前で誰かに抱きとめられた。

勇磨?

そのまま気を失いかけ、
朦朧とする中でツバサくんの顔が見えた。

あれ、幻かな。

なんで、ツバサくんが見えるんだ?

私、死んじゃうのか。

そのまま、気を失った。

気付いた時には自宅のベッドだった。

「あーナナ、気がついた!良かった!
ママ心配しちゃったわよ。まだ熱はあるね。」

体の節々が痛く熱いのに寒気がする。

「ママ、私、どうやって、ここに」

安心したママはあきれ顔で言った。

「覚えてないの?ツバサくんが背負ってきてくれたんだよ。
あんた、熱で倒れたって。しかもびしょ濡れで。
川で遊んでたんだって!ツバサくん、ものすごく謝ってたわよ。」

ふっ、川って。

思わず吹き出した。

でも、あれは幻じゃなかったんだ。

本当にツバサくんだったんだな。

「まーもう少し寝てなさい。
ツバサくん、明日またお見舞いに来てくれるって」

ツバサくん、昨日、あんな酷いこと言ったのに。

ここまで連れてきてくれたのか。

ちょっと心が温かくなる。

もう、あれこれ考える力がなかった。
また気を失うように、そのまま目をつぶった。