お風呂あがり、
鏡を見ながらまた勇磨の言葉を思い出した。

本当にムカツク

「お前、必死でみっともないな」

勇磨の一言が頭から離れない。

お前ってなんだよ!ムカツク!

ムカムカと不安と自信のなさとで、
自分自身が分からなくなっていた。

何であんな事を、
言われないといけないんだろう。

突然、携帯が鳴る。
反射的に勇磨からだと思った。

なんでだろう。

でも相手はツバサくんだった。

今日は雨だったのに連絡なかったから、
何かあったんだとそう思った。

「今、なぁなの家の前にいるんだ、
降りて来れない?」

慌てて部屋のカーテンを開けると、
街灯の下にツバサくんが立っている。

私を見つけると手を上げて笑った。

一瞬躊躇した。

勇磨に夜はウロつくな!と
言われてた事を思い出した。

女なんだから自覚しろ、って。

でもすぐに迷いは消えた。

勇磨なんて大嫌い。

これで勇磨との約束は全て破った。

「うん、今行く」

急いで外に出る。

髪を乾かす前に出てきたせいか、
ちょっと寒い。
雨上がりで夜はちょっと冷える。

「公園、行こうか」

そう言って歩き出すツバサくんについて行った。

「どうしたの?何かあった?」

そういう私にツバサくんは優しく笑う。



何?

「なぁあは、いつもそれだな。
何かないと来ちゃだめなの?」

そう言って私を見る。

ツバサくんの真剣な目に、
私の体は金縛りになる。

ダメじゃない、そう言うのが精一杯。

こうやって会いに来てくれて、すごく嬉しい。

公園で2人で話すのが嬉しい。

ツバサくんに会えるのが嬉しい。

だけど同時に不安が襲う。

勇磨に学校で言われた事を思い出した。

私じゃ埋まらないから何度も来るの?

本当に会いたいのは違う子なの?

「でもさ、なんかあったのは正解なんだよね。
さすがだね、なぁな」

やっぱり、何かあったんだ、カスミちゃんと。

勇磨の言う通りだ。

私は蚊帳の外だ。

深呼吸した。

「何、何、どうしたの?なんでも聞くよ」

なんとか声を震わせずに言えた。
いつも通りにできたかな。

涼しい夜風が通り抜ける。
体が冷えてるのは季節のせいだけじゃない。

ツバサくんは黙ったままリュックから、
ジャージを取り出し私の肩にかけた。

「部活のだから臭いけど、ごめん。これ着て」

「ありがとう」

でも、そんなに優しくされたら、
想いがまた溢れる。

どーしょう。やっぱり、すごく好きだ。

何がこんなに好きなのかもう、
分かんないけど。

カスミちゃんと何かあって、
辛くて私のとこに来ただけだって分かってる。

ヒドイのは承知で、別れろって思ってる。

ジャージの裾をぎゅっと掴んだ。

ツバサくんの匂いがする。

「俺さ、何にも気付けないし、
どうしたらいいのかとか分からないし、
女の子の気持ちも分からなくて、だから、
カスミちゃんにも愛想尽つかされちゃって。」

ツバサくんがツラそうに話しだした。

本当にツラそうに。