待ち合わせ場所にもうみんな、来てた。

「なぁな!」

ツバサくんが大きく手を振る。
その横でカスミちゃんが笑ってる。

今日のカスミちゃんは、
パンツスタイルでカッコよかった。

そんな格好もするんだ。

自分の服を見下ろしてみる。

赤いフードのスエットワンピースに、
ショートパンツを合わせた。

自分では気に入ったけど、どうなのかな。

「なぁな、早く観覧車乗ろうよ!」

そう言って、
私の腕を引っ張ろうとするツバサくんの手を
勇磨が払う。

「なんだよ、工藤!」

口を尖らせるツバサくんに、
カスミちゃんが腕を絡ませる。

「2人で乗ろうよ、ツバサくん。
ナナちゃんと工藤くんもその方がいいよね?」

ニコニコ笑ってるけど反論は許さない圧。

怖っ。

そのまま私は勇磨と歩き出した。

後ろからツバサくん達が付いてくる。

前をイチャイチャしながら歩かれるよりマシだ。

「赤ずきんちゃんみたい。」

ふいに、勇磨が私のフードをかぶせた。

「余計、小ちゃい」

ケラケラと1人で笑う。

なんだよ、バカ。

不機嫌になった私に気が付いて

「ごめん、ごめん。かわいいなぁと思って」

もう、いいって。

「本当だよ。赤ずきんちゃん。オオカミになって丸呑みしたいくらい」

褒めてるのかバカにしてるのか分からないな。
フードを取って髪を直す。
後ろからツバサくんが声をかけてきた。

「今日は何回乗る?なぁな」

あ、そうか、観覧車か。

見上げてみる。

もう、何回もツバサくんと乗ってる。

いつもは気が張ってた。

それに本当は高所恐怖症で、
怖いなんてバレたくなかった。

でも今日はツバサくんと乗るわけじゃない。

勇磨とだ。

勇磨といると本心が出ちゃう。

気を張る必要も飾る必要もない。

「1回でいいかな」

私の答えに不服そうなツバサくんだったけど、
気がつかないフリをした。

観覧車の列に並んでまた見上げる。

ゆっくり優雅に回転するゴンドラとは対照的に
私の心臓はドクドク鼓動する。

これ、本当に乗らなきゃダメなんだよね。

後ろに並んでるツバサくん達。

カスミちゃんがツバサくんの腕にそっとつかまり、怖いねってささやいてる。

ウソつけ!そんな余裕な顔して!

でも、ここで乗らないなんて、
空気読めない事言えないし、
何より横でニヤニヤ私を見てる勇磨!

「ナナ、どうした?顔色悪くない?怖いとか?」

勇磨の声にツバサくんが反応する。

「なぁな、好きなんだよ、観覧車。
高いところ好きって、
いつも一緒に乗ってるんだよね」

勇磨が「ふーん」と片眉をあげて不機嫌になる。

それよりも、カスミちゃんだ。