最後のひと言が、彼女を更に炎上させた。

「何?彼女きどり?ウザイ、消えろ」

そう言って私を思いっきり突き飛ばした。

無防備だった私はよろけ、
壁におもいっきりぶつかって、
はね返り、尻もちをついた。

痛みと悔しさで言葉が出ない私を見下ろし、
ケラケラ笑う彼女たち。
必死に手を伸ばし、あの子の腕を掴んだ。

「離してよ!」

やだ、離さない。
勇磨には関わらない、傷つけないって
約束して。

「うるさっ、離して!」

離さない、絶対。

私の必死な態度にドン引きしたのか、
怖くなったのか、彼女たちは渋々

「分かったから離して。」

約束してくれた。

良かった、約束してくれた。
勇磨を傷付けずに済んだ。

ほっとしたら、少し涙が出てきた。

こんなところじゃ、泣けない。

みんな、興味津々で、こっちを見てる。

なんとか立ち上がり、足を引き摺って
そのまま階段を上がった。

いつもの避難場所。

屋上だ。

空、青いなぁ。

あぁ、良かった。
本当に。

でも。

あんな子だったなんて。

私、わからなかった。
見破れなかった。

勇磨に、なんて謝ったらいいんだろ。

悔しい。

私って、なんて人を見る目ないのかなぁ。
もうやだ。

勇磨、ごめん。

「大丈夫か?」

その声に振り返ると息を切らして
勇磨が立っていた。

ふっ。なんで、来るんだよ、バカ。
また泣いてるとこ、見られた。

もう、最悪。

慌てて、涙をふいた。

「勇磨、どこ行ってたの?」

立ち上がった私に駆け寄り
そのまま支えるように、寄り添って
一緒に座った。

「パン、買いに行ってた」

そう言って、袋を見せる。
え、なんだよ、購買?
あの子と話すって、言ってたじゃん。

文句を言いたいだけの私に
真剣な眼差しを向けた。

ちょっと、怒ってるかな、そんな感じ。

「ナナ、お前、やりすぎ。気をつけろ」

何のこと?
あの子たちとの事?

だけど、勇磨は購買に行ってたんじゃ...。

「みんな噂してた。ナナが、
アイツらに絡んでるって。」

絡むって、
まぁ、そうか。

「アイツらの遊びに気が付かないのは
ナナくらいだ。あんなの本気にする奴は
よっぽどモテない男だな。心配しなくても
俺は騙されない。」

そう言い切って、私を抱きしめた。

ちょ、ちょっと。

「うるさい、ナナが悪い。」

なんで、私?

「いいか、俺は騙されないし、傷つかない。
なめんな。だから、ナナは俺の為にケンカを売るな、俺を守ろとするなよ、ナナが傷つけられたら、俺がボロボロになるより、キツイ」

その言葉で、本当に反省した。

ごめん、確かに、やりすぎだよね。

もう何回も、私がファンクラブとやり合って
ケガする度に、こんな顔をさせた。

私から離れようとした。

そうだった、勇磨はそういう奴だ。

私、また、こんな顔をさせてる。

はぁ、ダメだな、私。