その後は無言の圧で、
私を捕らえる。

動揺して混乱する私は
何も言えず、ただ、勇磨の瞳を見つめる。

自問自答しながら。

嘘はついてない、本当に
そう思った。

勇磨には幸せになって欲しいし、
今までの分も含めて、本当の勇磨を
知りたいって、見てくれる人がいたら
いいなって、それは、思う。

あの子と付き合って欲しいかって
言われたら、それは...。

なんか違うような。

あの子じゃなきゃ、いいのか?

分からない。

答えが出ないまま、授業が始まり、
その後は何もなかったように
過ぎて行った

なんで即答できなかったんだろう。

勇磨はいつも私を励ましてくれる。
私だって勇磨の幸せを願いたい。

あ、そうか。

イケメンチャレンジだ。

そのせいだ。

そうだ、そうだ。

腑に落ちた途端、気が逸れた。

窓の外を眺める。

ああ、いい天気だなぁ。

気持ちいい青空だ。

午前の授業も終わり、まったりとした昼休み。

突然、隣で立ち上がる音がした。

勇磨だ。

「お昼、買いに行くの?」

さっきとは真逆の上機嫌な顔で
私を見た。

「ううん、さっきの子と話してくる」

予想外の返事に動揺した。

え?

なんで?

なんで、急に?

「ナナに言われて、確かにそうだなって
思ってさ。
本当に俺を見てくれる奴、ナナ以外にも
いるかもしれないだろ」

いや確かにそうだけど。

そうなんだけど。

でもあの子は...。

オロオロする私を、
鼻で笑って教室を出て行った。

また鼻で笑った...。

ちょっと、待ってよ、
あの子はダメだよ、勇磨。

さっき、チカに聞いた。

「うん?イケメンチャレンジ?
ああ、イケメンに端から告白するやつだよね。
付き合うとか、好きとか関係なくて、
どれだけイケメンに告れるか?
収集みたいなの、趣味悪いよねー」

ダメだ、そんなの。

また傷つける。

走って教室を出た!

私のせいだ。

私が何も知らずに、考えずに言ったから。

そんなゲームがあるなんて、
そんな暇な人がいるなんて
知らなかった。

本当、私って何も見えてない。

人だかり、華やいでるところを探す。

いない、

早くしないと、傷つけられちゃう。

階段の踊り場に、今朝の彼女を見つけた。

友達に囲まれて笑ってる。

かき分けて、その輪に入った。

「木下さん、何?何か用?」

嫌な目で私を見る。

息を整えて聞いた。

「勇、勇磨は?」

目つきがより悪くなる。

あれ、この子、名前、なんだっけ?

何組の子?

もう、何してんだ、私?

だけど、引けない。

「イケメンチャレンジ、聞いた。
そんな事をして何が楽しいの?
本当、暇人!
相手の気持ち考えてみてよ。
趣味悪い。」

シーンとした後、
彼女たちは顔を見合わせ
爆笑した。

え、何がおかしいの?

「ばっかみたい。
木下さんに関係ないでしよ。
私達の遊びなんだから。
工藤くんだって、
私の話を聞きもしないで無視するんだから、
人の気持ちって、言うなら、
そっちの方が酷いよねぇ。」

まぁ、そうね。

勇磨も酷い。

だけど、

「あんたみたいな子がいるから、
勇磨は、ああなっちゃうの。
本当は優しくて、
自分の事よりも他人を優先するような、
人を思いやれる奴なのに。」

彼女たちを睨みつけた。

「まぁ、確かに、あなた達の悪趣味な
遊びは私には関係ない。
だけど、勇磨にするのは許せない。
他でやって。勇磨には近づかないで!
傷つけるなら、私は、許さない。」

お願い、ほっといてあげて。

また勇磨の心が閉じちゃう。

「もう、勇磨を傷つけないで。」