「傷。血が出てる。」

勇磨が私の額に手をあてた。

慌てて勇磨と距離を置いて、
自分で額を押さえた。

さっきまで気にならなかったのに、
気にした途端、超、痛い!

「痛っ!もう、あんたのファンクラブ、
潰してやる!」

勇磨は私に深く頭を下げて謝った。

「ごめん、本当にごめん、俺、何したらいい?」

真剣に見つめられただけで、
ちょっとドキドキする自分にも驚いた。

おでこの傷にまた触れる。

「女の顔は命だって、ミアンが言ってた。
顔に傷作ると心に何倍もの傷ができるって。
責任取る」

うん、まぁミアンちゃんはそうだと思う。

でも、責任取るって。

ちょっと笑えるんだけど。

いつの時代?

だけどおもしろくて、からかってみた。

「うん、責任取って勇磨のお嫁にして」

さぁ、どうする。
モテ男、どうする?

「そんなんでいいの?」

うそ。

バカなの。

うーやりにくいっ

「勇磨、もういい加減にして。
バレてるだろうから言うけど、
これは勇磨には関係ない事なの!
私とファンクラブの問題なの!
勇磨には関係ない。
デコの傷なんて、私の心には何の影響もない。」

勇磨が顔を上げた。

「は?俺のせいだろ!
俺がナナと話したり帰ったりしたから。
俺、やっぱり、ナナとは距離を置いて」

もー勇磨って!

「それが、嫌なの!
あいつらのせいで何で、
距離を置く必要があるの」

私の言葉を黙って聞いていた。

「違うんだよ、勇磨。
私とファンクラブの問題なんだよ。
私が勇磨と友達でいたくて、一緒にいるの!
楽しくて話したり遊んだりしてるんだから、
それをやめろって言われて、
ムカついたからケンカしたの。
勇磨がどうとかじゃなくて、
私が彼女達の言う事にムカついたんだよ、
だからケンカも買ったの。
私の買ったケンカを
勝手に自分の物にしないでよね。」

私の話を聞きながら、
勇磨は大きなため息をついたり、
首を振ったり、最後は諦めたように笑った。

「やっぱり、すげぇな。こんな奴初めてだよ。
あいつらからは俺が必ず守るから。
だから1人で泣くなよ」

私の頭をくちゃくちゃっとする勇磨のお腹に、
一発入れてやった。

「守んなくていいし、やられたらやり返すし!
あんな奴らには負けない!
何が私達の工藤くんだよ!
キモっ。ユーマーズってダサ過ぎだろが!」

ムカムカが再発した私の横で、
勇磨は苦笑いをする。

「そうだよなぁ。
俺は意地悪だしバカだし、
臭いしウザいんだったよな。
あぁ、オナラもするんだったな。
ひでぇーなナナ。
それに中2病も患ってるしな。」

え?聞いてた!

「聞いてたなら、もっと早く助けてよ」

「いや、ナナが勝ってたからさ。
俺が来た時には、
あいつらが一方的にやられてた」

笑いが止まらない勇磨。

もうっ、なんなの?