土曜のコスモワールドの事を考えてた。

ツバサくんとカスミちゃんを見るのはツライ。

でも、ツバサくんに会えるのは嬉しい。

私って何だろう。

そんな事を考えてたから、
全く背後に気がつかなかった。

ガラガラと重い扉が、
突然閉まる音がして振り返ると、
見覚えのある女子が数人立ってた。

みんな私を冷たい目で見つめてる。

体育の授業の後、
体育倉庫で片付けをしていた。

これは、なんだ?

なんで怒ってるのか。

危機感みたいな物は、
本能で感じるけど、身に覚えがない。

この人達は同じ学年だという事は、
知ってるけど名前が分からない。

あ、でもあの子、同じクラスだ。
えっと。

「南さん、だよね?」

私の声に彼女はクスッと笑う。

「へぇー私の事知ってるんだ。
木下さんは工藤くんの事しか、
興味ないのかと思ってたー。」

勇磨?なんで、勇磨

そう言う私に全員の敵意が一層高まった。

「名前で呼んでんじゃねーよ」

誰かが怒鳴る

「あんたさームカつくんだよ!
私達の工藤くんに言い寄ったりしてさー」

「隣の席で仕方なく話してくれてるだけなのに、勘違いすんじゃねーよ」

次から次へと罵声を浴びせられた。
それですぐに理解した。

この子達は勇磨の事、好きなんだ。

私と勇磨が友達でいるのが気に入らないんだ。

今までも何人かいた。

だけど、言いがかりも甚だしい。

「でも私に怒るの違くない?
勇磨が好きなら直接言えばいいんじゃない?」

そう言う私に更に怒りはMAXになる

「私達の工藤くんに色目使ってんじゃねーよ」

「工藤くんはみんなの物なんだから。
誰か1人が独占できる物じゃないの!」

「ユーマーズの許可なくして
工藤くんに近付くなんてありえない!」

衝撃が大きすぎて、
しばらく呆然と彼女達を見てるしか
できなかった。

私達の工藤くんって。

みんなの物って。

しかも、色目って。

この人達、勇磨を何だと思ってるのか。

というか、ユーマーズって。

勇磨がモテるのは知ってた。
本人も主張してたし。
これが噂のファンクラブか!

え?え?でも待って。

ファンクラブ名だよね、ユーマーズって。

ダサくね?

マズイ、ツボだ。

ユーマーズ。

「あの、ユーマーズって会員は、
何名様ほどいるの?」

ちょっと半笑いになってしまった私の表情で
バカにしてるのがバレた。

「マジ許せない!」

そう言って私の髪を引っ張り左右に振った。

突然の事で足がもつれてよろけ、
近くのハードルの山に倒れこんだ。

「痛っ」

肘とおでこが痛い。

それでも彼女達は止まらず、
バレーボールをぶつけてくる。

目を開けられず、両腕で自分を庇うしかない。

激しくぶつけられ立てず、痛さも増す。

でも、私の中で何かがキレた。

手を伸ばし転がるボールを投げ返した。

手当たり次第、投げ返す。

目が開けられないんだから、それしか出来ない!

そのうち、彼女達が悲鳴を上げ始めた。

当たってるんだ!

そう思って目を開けてみると、
各々、どこかを押さえてたり、
避けようと必死になってた。

なんだよ、ユーマーズ弱すぎ!

そんなんで、挑んでくるなよ!