「どうしたの?なぁな」

とぼけた声にもグッとくる。

重症だな、私。

「あのね、土曜なんだけど、ごめんね。
カスミちゃんと勇磨と4人でって
提案したのに、勇磨、ダメだった。
用事あるみたい、だから、どよ」

そこまで話した時に
横からスマホを取られた。

勇磨だ。

「あ、ツバサ?俺。土曜、大丈夫だから。
それから、俺との約束、忘れてんじゃねーよ。
は?約束しただろ。あれ、約束だよ。
ナナを勝手に呼び出すな。いいな、じゃ土曜な」

そう言って勝手に切った。
スマホを黙って私に渡して教室に戻る

何?

訳が分からない。

機嫌はなおったの?

なおらないの?

どっち?

「ごめん、話、ちゃんと聞かないで。
ちょっとイライラしたから。」

これは謝ってるんだよね?
やっぱり分からない。

「ねぇ勇磨。怒ってるの?
何に?分かんないよ」

私の言葉にまた少しイライラする。

「なんで分かんないんだよ。
全くナナもツバサも。
土曜は俺も行くから。」

まだ勇磨のイライラの原因は不明だか、
正直、ホッとした。

良かった。

ツバサくんの誘いを断れない私。

彼女がいるのに、
2人で観覧車に乗りたいって願う私。

ギリギリのところで踏みとどまれた。

勇磨が来てくれなかったら、
どうなってたんだろう。

カスミちゃんと3人って事もあったのかも。

ツバサくんなら言い出し兼ねない。

心がごちゃごちゃする。
とにかく勇磨が来てくれて良かった。

「ありがとう。一緒に行ってくれて。
勇磨がいないと笑えなかったと思うから」

感謝しといた。

勇磨の機嫌もなおったらしく、
急にニコニコしはじめた。

感情の起伏ね。全く。

「いいよ。
観覧車といえばてっぺんでキスだな。
俺と乗りたいって事は、
そういう事でいいって事かな」

からかって笑う。

「バカ勇磨。
いいって言ったらしてくれるの?
ちゅーって」

私の言葉にまた眉を上げる。

「どうしようかな。俺のちゅうは高いよ」

バカなんだな。勇磨って。

でも本当、最近、キャラ変してる。

チャラ男勇磨は男兄弟のいない私には、
刺激が強すぎる。

「もう、そんな事ばっか言うなら
来なくていいからね」

そう言う私に得意になってみせる。

「は?本当に行かなくていいの?
3人で乗る訳?地獄だろ。
ナナ、自分の立場、忘れてねぇか。
一緒に乗って下さい、だろ」

出た、意地悪勇磨!
俺様勇磨!

「すみません。一緒に乗って下さい」

満足そうに頷いて、
ふと思い出したように私を見る。

「仕方ねぇなぁ。任せろ!
あ、あと、あれな。
土曜はまたヒラヒラの着てきて。
俺、ああいうの、好き。」

ヒラヒラの、とは?

まさか、ワンピースの事か!

変態勇磨!

ああ!ムカつく!

だけど、反論できない。
自分の頭をくしゃくしゃにして耐えた。

仕方ない。

またワンピース、
着て行こうじゃないか!

ああ、イラつく。

そんな私を見てゲラゲラ笑う勇磨。

土曜が少し楽しみになった。

私の感情の起伏も激しくなってる。