その場に座り込むと同時に、
心をコントロールできなくなった。

勝手に涙が溢れて止まらなくなる。

あの貝、欲しかったのに。

波が持って行っちゃった。

泣きじゃくる私の上に、
ふわっと何かかぶさった。

それは紺の上着で勇磨のだ。

なんだよ、勇磨。

あそこにいてって、言ったのに。

「スカートパタパタして、パンツ見えちゃうよ」

余計な事を言う!

「見えてもいいやつ、履いてるの!」

顔を上げずに背中にいる勇磨に言った。

「勝負パンツってやつ?
ダメだろ、それ。
そんなの簡単に見せる女になるな」

勝負パンツじゃないし。
もう、ムカツク。
立ち上がって振り返る。

「バカ勇磨!
見えてもいいやつって言うのは、
短パンみたいの履いてるって話なの」

ポカーンとして私を見る。

「へぇー」

っていうか、帰ったら姉妹に聞きなさいよ、
女の子なら持ってるから。

「それでも、見せんな。」

もうほっといてよ。
早く戻って。

「嫌だ。ほっとかない。また1人で泣くから。
かわいくなくてムカツクけど、
1人で泣かせたくない。
で、なんで泣いてるの?」

ウザイっ。

お節介!

バカ!

でも、勇磨の前で、
涙をこらえられなくなってた。

「何で泣いてるの?」

優しく笑って私を見つめる。

そんな顔、初めて見たよ。

だから私も止められなくなる。

「貝殻が」

海を指差した。

「ん?何?貝殻?」

頷く。

「貝殻が波にさらわれた。
すごくキレイでピンクでキラキラしてて、
欲しかったのに。
波が、あっという間に持って行った」

話すうちに、また涙が溢れた。

ママにあれが欲しい、どうしても欲しいと
泣いてだだこねた時のように勇磨に泣きついた。

「すごく欲しかった」

欲しかった。

勇磨には素直に言えるのに、
なんでツバサくんには言えないんだろう。

「ふっ」

また鼻で笑う。

「仕方ねぇな、待ってろ」

横で靴を脱ぎGパンの裾をまくって海に入った。

「わー冷めてぇ。でも気持ちいいなぁ。」

砂を掘る仕草をする。

え、ある訳ないじゃん!
こんなの見つかったら奇跡だよ!

「じゃあ奇跡が起きたら約束して。
俺を無視するな。
つらい時は俺が泣かせてやるから。
性格が悪くて口が悪くて
かわいくなくて態度も悪いな。
すぐ怒るしスネるし泣くし
暴力女のナナを嫌なくらい見てきた。
だから、安心しろ!
これから先、どんなナナを見せられても
嫌いにはならない。
ずっと友達だ。」

勇磨、カッコつけて。

またムカツク。

同じ歳なのに。

バカ!

水をすくってかけた。

「は?何すんだよ」

勇磨も私にかける。

「ちょっと、やめてよ、バカ」

私も靴を脱いで海に入った。
両手でバシャバシャかけ合う。

「キャー」

大騒ぎして砂に足を取られる。

勇磨に後ろから抱きしめられ、
ジャポンは避けられた。

だけどなんだろう。

この感じ。

背中に勇磨を感じでドキドキする。

一瞬、時が止まる感じまでした。

勇磨も止まった。

「ナナ、さっきの撤回する。
ずっと友達ってのはナシだ」