ツライ。

強くリュックにしがみついて丸まって泣いた。

瞬間、私の頭に誰かが手を置いた。
驚いて見上げると勇磨だった。

「ふっ、ひでぇ顔!」

鼻で笑った!

悔しいけど、もう涙は止められない。
そのまま、またリュックを抱く。

「中の教科書とか濡れるぞ」

そう言いながら私のリュックを取り上げた。

「返してよ、バカ。
つかまるトコが必要なの。
あと、先に帰って」

1人にしてよ、今は泣く時間。
気が済むまで泣きたいのに。

「ナナは、かわいくないな」

うるさいっ。
勇磨にかわいいとか思われなくていいから。
早く帰ってよ。

「仕方ないなぁ、ここにつかまれ」

後ろ向きになり、私の両腕を引っ張り
自分の背中にしがみつかせる勇磨。

私は勇磨の背中を抱くカタチになり、動揺した。

でも勇磨が私の両手を掴んでるから、
離れられない。

お、男の子の背中って…

「ほら、リュックよりいいだろ。
早く泣け。泣いていつもの性格悪いお前に戻れ」

ひと言余計なんだよ。

それに、大きくてがっしりした背中に抱きつくなんて…

変な緊張で涙が止まったじゃん!

でも少し安心する。

大きくて温かくて、リュックよりいい。

ヤバイ、止まった涙が、また…

もう、いいや、泣いちゃえ!

背中だから、勇磨に泣いてる所を
見られる心配もない。

そういえば、勇磨の前で泣くのは2回目だ。
この前はタオルをかぶせて隠してくれた。

ごめん、勇磨!
もう、涙、止まらない!

ツバサくんが好き。

かわいくて守ってあげたい。

だけど気持ちを伝えられない。

だって答えは分かってるから。

困らせるだけだから。

困らせるくらいなら言いたくない。

なんだ、私、なんなの?

なんで、ツバサくんを悲しませたくない、
悩ませたくないが優先するのか。

それに、怖い。
振られるのが
ハッキリと女の子として見てないって。
考えた事ないって言われるのが。

あーこんがらがる。

泣いては途中で自分にイライラして、
勇磨の背中を何回も叩いた。

でも勇磨は1つも文句を言わず、
ずっと私の好きにさせてくれた。

少しずつ泣くのにも疲れた頃、
心が軽くなってきた。

結局、好きには変わりない。

思いを伝えられないのも変わらない。

友達でもいいから近くにいたい。

頼ってくれたら力になりたい。

たとえ香澄ちゃんの方が近くにいたとしても私に出来る事が1つでもあるなら。

よし、また少し頑張ろう。