私の言葉を勇磨は黙って聞いていた。

友達になりたいんだよ。
私にその価値はない?

そんな私を、
睨むように見ていた勇磨の表情が和らいだ。

そして、最後は大きなため息をついた。

「お前、変わってんな。いいんだな。本当に。
ツライ思いするかもしれないんだぞ」

また、大げさな。

中2病入っちゃってますよ。

うん、でも、大丈夫。
中2病も付き合ってやるよ。

「私、結構強いし、性格も悪いんだ。
心の中は悪口だらけだし、ちなみにあの3人のいじめっ子は体育倉庫に半日閉じ込めたし。
やられっぱなしにはしない。」

勇磨が吹き出した。

「すげぇな、木下。
俺は木下を拒否する事で守った気になってた。
また勘違い男だ。本当、カッコ悪いな」

勇磨が笑ってる!
やった!
良かった。戻った!

「守らなくていい。余計なお世話。
逆に嫌がらせ歓迎だよ。全てやり返す!」

呆れたように私を見る勇磨。

「だけど、
手首やられて泣いてる木下を見たら俺、
ああするのが1番だと思った。俺のせいで」

そこまで言った勇磨の口に手をあてて止めた。

周りで罵声や悲鳴が上がる。

「うるさいっ散って」

思わず怒鳴った。
勇磨に向き直す。

「俺のせいじゃない。」

そう言い切る私の手を掴んで、ニヤッと笑う。

「確かに俺が守らなくても強そうだな。」

うんうん、そうだよ。

「じゃあ友達ね、勇磨」

またため息をついて私を見る。

「仕方ねぇな、木下、しつこそうだもんな。
友達な」

やったー。
勇磨を友達にしとくと
ミアンちゃんとリノさんにも会えるしね。
教室に戻りながら勇磨は私に聞いた。

「ねぇ、なんで急に呼び捨て?」

ああ、それね。

「リノさんに言われたの。
みんなの前で呼び捨てされたら、
無視はしないんじゃないかって。
守った気になってるから、
ちゃんと話ができるはずって」

驚いた顔をする。

「木下、リノとも知り合いになったのか。」

「うん、昨日、ミアンちゃんと一緒にいて、
紹介してもらったんだ。
いいね、勇磨、あんな美人の姉妹いてさ、
ドキドキしちゃわない?
私もう、ドキドキしちゃって。
リノさんに抱きしめられたらもういい匂いで。
惚れちゃう。
またぎゅってしてくれないかなぁ」

あからさまに嫌な顔をして腕組みをする勇磨。

「俺達、似てるって言われるんだぜ。
それなのに、俺の評価だけ、低すぎね?」

笑った。

「何?スネてんの?
モテるの嫌なんでしょ。
だったら良くない?
結局、もてはやされたい感じ?
欲しがりだね。」

ちょっとふくれて横を向く。

「お前、嫌い」

へぇ意外。
そんな表情もするのか。
なんか、かわいいじゃんか!

「私も嫌いだよ」

顔を見合わせて笑った。

「ヤベ、予鈴鳴っちゃう、急ごうぜ、ナナ」

あ、ナナって言った!

「なんだよ、
自分だけ呼び捨てにして済むと思ったのか。
走れ、運動神経ゼロナナ」

なんかムカつくのは変わらないな。
でも勇磨と友達になれて良かった。
これから楽しくなりそうだな。

そんな予感がした。