翌日、いつも通りに登校すると、
もう工藤くんは席に着いていた。

大きく息を吸い込んで吐く。

よし。

気合いを入れて工藤くんの席の前に立った。

私を見上げる。

ちょっと驚いた顔をしたけど、
すぐに感じ悪い表情を作る。

「おはよう、勇磨!」

いきなり呼び捨てにされ、ちょっとひるんだ。

でもすぐその瞳に怒りがこもった。

周りの女子がざわつく。

見渡すと廊下の窓から、
大勢の女の子達が工藤くんを見ている。

本当にモテるんだな。

よく考えれば、こんな状況おかしいって
分かるのに。

ザワザワしてるのは気が付いてたのに。

あー!私ってバカだ!

彼女達に聞こえるように、
工藤くんに宣戦布告してやる!

「勇磨、おはようは?」

私の迫力に押されてながらも、
周囲を気にしてイライラを隠さない。

「木下、どういうつもりだよ」

目力が怖い!
でも逃がさない。

「どうもこうもないよね。
私は友達に挨拶してるだけ」

立ち上がって私を見下ろし睨む。

だけど彼女達から私を隠すように立つ。

ホントだ、守ってくれてるんだ。

「友達じゃねぇって言っただろ。」

工藤くんは懇願するように私に言った。

でも、私も負けない。

「1週間毎日朝練してくれたよね。
シュートできるようにしてくれた。
それは友達だからでしょ、勇磨!」

わざと大きい声で言った。

「え?朝練?」
「毎日?」
「何、あの子!」

周囲が一層ザワつく。

困ってる、工藤くん。
でも、睨んだまま、私から目を離さない。

「ちょっと来い」

そのまま手を引かれて、
階段の踊り場まで連れて行かれた。

やはり行く先々で悲鳴が起こる。

教室よりは静かになった。

私は全然、教室で良かったのに。

でも、私の作戦にかかった。

「木下、これ以上俺に近づくな。
また痛い思いするぞ、言っただろ。いいな」

ふんっ

鼻で笑ってやった。
どう?鼻で笑われる感じ。

「だから何?俺といるとケガするぜ的な?」

茶化した。
だけど工藤くんは真剣だ。

「手首やられたの知ってた。
俺が木下といたからだ。
だからもう木下とは関わらない」

工藤勇磨。

もしかしたら泣けるほどいい奴なのかもしれない。

だけど、腹が立つ。
それじゃあ勇磨の気持ちはどうなるの?
カッコつけんな!

「勇磨は?勇磨は私と友達になりたくない?
私が誰かに嫌がらせをされるとかそんな事、どうでもいいの、勇磨はどうかって聞いてるの」

また女子が集まって私達を見て騒ぐ。
キッと睨んで周りを威嚇する。

「やめろ、そういうの。
また嫌がらせされるぞ。」

勇磨はまた私を隠すように立つ。
あえてその影から出る。

イライラする。

「だから、何だよ。
私は私が友達になりたい人と仲良くするの!
私が決めたんだよ!
男とか女とか関係ないの。
モテるとかも関係ないっ。
それで嫌がらせをされるなら、戦う。
せっかくいい奴かもしれないって思ったのに。
なんで自由に友達になれないの?
間違ってるよね。
そんな間違ってる人達の
いいなりになんてなりたくない。
私は勇磨の気持ちが知りたい。
私の事もいじめっ子の事も考えずに、
自分がどうしたいか。それで決めて。」

どうする?勇磨!