陰気野郎は相変わらずで挨拶も無視する。

あんなにいい奴だったのにな、
と残念に思ったのは1週間くらいで
正直、もともとこんな奴だったとも
思うようになった。

あの球技大会以来、いじめっ子3人がチョイチョイ嫌味を言いに来るけど、少しずつ減って来た。

私も一方的にやられはせず、
やり返したりもしたから、チカもあきれて

「どっちもどっちに見えちゃうなぁ」

と笑った。

学校帰りコンビニ前で声をかけられた。

「ナナちゃーん」

振り返るとセーラー服姿の、
工藤くんの妹が立っていた。

隣にはこれまた超美人なお姉さんも。

「ミアンちゃん。」

走って近づく。

今日もミアンちゃん、すごくかわいい。
セーラー服なんてかわいすぎて罪!

「リノ、この子だよ。
勇兄のクラスメートのナナミちゃん。
前に話したじゃん。
勇兄の事、目に入らない貴重な天然ちゃん。」

隣のお姉さまに紹介してくれた。

にっこりとお姉さまが私を見る。
腕組みして上から下まで値踏みするように見る。

何?
ちょっと、怖い。

「へぇ、この子がね。私はリノ。
勇磨とミアンの姉よ。」

え、工藤くんの、お姉さん!

お姉さんもいるのか!

超、美人!
美人姉妹か羨ましい!

「ねぇナナミちゃん、
勇磨の事、本当になんとも思わないの?」

リノさんが聞く。
仕草が色っぽい。

「あ、うん、まぁ」

初めは遠慮したけど、
ミアンちゃんが「言っちゃえ!」と言うから、
最近の工藤くんへの怒りもあり言っちゃった。

「というか、嫌いです。大っ嫌い。
お姉さんに言うのも何ですが、
挨拶できないし、中2病で感じ悪いし、
何か言えば、俺を狙ってるって言う。
普通に会話が成立しないこじらせ野郎!
でも最近は優しいとこもあるなって、
思ってたのに。
ニコニコ笑ってくれてたのに、
急に冷たくなって俺に構うな、関わるなって。
あの人、感情の起伏が激しくてついていけない!」

面倒臭いとも言った。
誰かに言った事でスッキリした。

リノさんが私の髪を優しく撫でて、
にっこりと笑った。

「勇磨、笑ったんだぁ。
ねえ、ナナちゃん、おもしろい子ね。
でもね。大事な弟の事、
悪く思われたままじゃ悲しいから言うけどね。
勇磨はナナちゃんを守ったんだと思うわよ。」

え、何から?

私、誰にも狙われてないんですけど。

まさか、
リノさんもスナイパーがいると思ってるの?

私の言葉に2人はケラケラと笑う。
笑った顔は工藤くんにもよく似てる。

「えっと、なんて言ったらいいかな。
勇磨はね、モテるのよ。
小さい頃から女の子が放っておかなくて、
嫉妬した男の子にも嫌われたり、
嫌な思いもいっぱいしてね。
だからあんな無表情で感じ悪い子なんだけど。
ナナちゃんは勇磨にとっては、
初めての自分を追わない女の子だったからら
戸惑って。
でも、一度は受け入れたんだと思う。
でもナナちゃんと仲良くなると、
他の女の子がナナちゃんに、
嫌がらせを始めたんじゃない?」

あ、そうか。
あのいじめっ子。

「でもそれは私といじめっ子との話で、
工藤くんは関係ないし」

ミアンちゃんがキャッキャッ笑う。

「えー関係あるじゃん。
勇兄のせいでナナちゃんが意地悪されたんだよ」

リノさんもにっこり見つめる。

「でも、やっぱり、工藤くんは関係ない。
私が、工藤くんと友達になりたいって、
思ったんです。
でも、いじめっ子は、それが気に入らない。
私のしたい事が気に入らないなら、
やっぱり私の問題なんです。
工藤くんが私に付きまとってるなら、
そりゃ工藤くんのせいだけどね。」

リノさんが私を抱きしめた。

ドキドキした。
ヤバっ。
ふんわりといい匂い。
なんの香水だろう。
素敵。

「ナナちゃん、好き。勇磨をよろしくね。
あの子の壁をぶち壊して仲良くしてやって。」

頭がぼーっとする。
こんな美人に抱きしめられてふわふわ。
いいな、工藤くん。
こんな美人の姉妹に挟まれて。
羨ましい。

「ナナちゃんと勇兄、合いそう。
付き合って欲しいなぁ。」

コラコラ、ミアンちゃん。

「工藤くんは無理かな。
私、好きな人いるの。
その人以外の男の子は芋に見えるから」

2人とも大爆笑する。

「勇磨が芋かぁ、新鮮。」

「勇兄さぁ、
うぬぼれちゃってカッコ悪いんだよね」

笑いが止まらない2人と別れて家に着いた。

リノさんの言葉が頭をぐるぐるする。

私を守った、か。

もしそうなら私には必要ない。

私は単純に工藤くんと友達になりたい。

工藤くんはどうなんだろう。

工藤くんの本当の気持ちが知りたい。

私は決意した。
よし、待ってろ、陰気野郎!
フルボッコにしてやる!