振り返るとトモとアヤノだ。

2人、手を繋いでる。自然だ。

「分かった?だって、面白いんだもん。
アイドルくん、本当にガキ」

トモがまた煽る。

アヤノがやめなよってなだめる。

勇磨が炎上する。

「ふざけんな。どうせ俺はガキだよ。
ねぇ、アヤノさん、嫌じゃないの?
彼氏が他の女の子とあんなの」

アヤノが首を傾げて笑う

「うん、ヤダって言うか、
私がトモとペアになれるくらい、
上手くなりたいって思うよ。
今はナナミには勝てないから。
単純に2人のダンスに惹かれるし、
最高だと認めてる。
でも勇磨くんが、
ヤキモチ妬くって言うのも、
最高の褒め言葉だよね。
それくらい情熱的って事だもん」

うん、アヤノの言う通り。

これは表現だ。

でも勇磨は納得いかない。

彼氏も彼氏なら彼女も彼女だな、
と呟いてる。

「本気で好きになる事はないの?」

勇磨が聞いた。

「それは分かんない。
ないともあるとも言えない。
でもそんなの、ダンスに限んないよな。
色んな所でパートナーってあるし、
お前がしっかり捕まえときゃいいんじゃない。
俺はアヤノに、
しっかり心を捕まえられてるからね」

もっともな事を言われて勇磨は凹む。

かわいいなぁ勇磨。

「まぁ、俺は、
勇磨がヤキモチ妬くのが楽しいから、
ガンガン行っちゃうけどね。
次の曲でもパートナー組んで、
見せつけてやろうぜ。
弾みでキスしちゃったらごめんね」

また煽る。

勇磨には冗談が通じない。

「俺、笑えない」

小さくなってかわいい。

「あーおもしろいっ。じゃあまたな」

散々、掻き回して2人は去っていった。

「ナナ、俺、ツライ」

そう言って側のベンチに座りこんで凹んでる。

「ゆーま」

私の両手を取って引き寄せる。

「アイツがナナにキスしたらどうしよう」

あー

これはもしかして。

「ねぇ、本当は凹んでないでしょ」

そう言う私にもっと凹んでみせる。

「ううん、俺、傷ついた。
ダンスとか言ってれば、
何も言えないと思って。
ねぇ、ナナマーマ」

やっぱり。

そう言って私に抱きつき腰に手を回す。

仕方ないなぁ。

勇磨の髪に顔を埋め、
背中や髪を撫でる。

「あったかい」

そう言って胸に顔を埋める勇磨。

「ちょっと、勇磨!」

腰に回した手が強くて体を離せない。

「いーじゃん。これくらい。ケチ」

ケチとかそういう問題?

もう、勇磨のバカ。

必死に逃れようと体をよじった。

両膝で私の足をガシッと挟んでるから、
全く抜けられない。

「ナナちゃんがイヤイヤすればする程、
俺、天国なんだけど」

わぁ。

勇磨の顔に胸を擦り付ける感じになってた!

もうっ。

動けない。

「ねぇ、ナナ、
あの超、短いピンクのドレス着てさ、
俺だけに踊ってよ」

変態が加速してる。

「変態」

口を尖らせる。

「ナナちゃんは、その変態が好きなんでしょ」

今日の勇磨は突き抜けてる。

「どうしたの、勇磨。今日はキモイよ」

私の悪口にも動じない。

「キモイのも好きでしょ」

まぁそうなんだけど。

「ナナ、
俺もう何回も言ってるけど、
ナナが好きだ。
本当に好きなんだ」

うん、知ってる。

勇磨を抱きしめる。

「私も大好き。」

最高に素敵な笑顔を私に向ける。

「うん、伝わった。
今日のステージでナナがずっと、
勇磨が好きー!って叫んでる気がした」

うわっ怖っ。

伝わってたんだ。

すごいっ。

でも。