もうずっと、伝えたかったから。

勇磨が私を信じてくれたから、
どんな私も嫌いにならないって、
私らしくいていいって教えてくれたから。

だから、この夢を見つけられた。

「勇磨、ありがとう」

そう言う私のほっぺを両手で挟んで潰す。

「俺、もう、やだ」

そう言って横を向く。

え?なんで?

「なんで」

そう聞く私の肩を抱いて、
観客席を指差す勇磨。

「見てみろよ、あいつら。
ナナのファンになったって。
俺、どんだけハラハラしてるか分かる?
ツバサとトモだけで、もう粉々だよ。
それなのにあと何人倒せばいいのか。
全然、安心できない」

横でトモが爆笑する。

「ちびは幸せだな。
過大評価してくれる彼がいてさ。」

ちょっと、どういう意味だよ、それ

「ごめん、ごめん、
ヤキモチ妬かせちゃったお詫びにさ、
勇磨、いい事教えてやるよ。」

そう言って勇磨の耳元で何か囁いた。

勇磨とトモがニヤっとする。

舞台の中央にひっぱられた。

「ナナ、いーか、
他の奴なんて見るなよ。
俺だけ見て。」

そう言っておでこにキスをした。

わーという歓声と悲鳴。

そして私への罵声。

勇磨へのブーイングも追加された。

「私、ファンクラブできちゃうかも」

勇磨は冷めた目で

「調子に乗るな!
そんなもん、はじから潰してやる」

そのまま私の肩を抱き、
会場を睨んで叫んだ。

「いいか!ナナに手を出したら殺すからな」

私も会場全体に叫んだ。

悲鳴と歓声がわく。

「勇磨に手を出したらぶっ殺す」

勇磨がぎゅっと抱きしめてくれた。

客席からアンコールがかかる。

タツキが叫ぶ。

「よしっアンコールいくぜー」

アンコール曲は、
初めて見に行った日に踊ってた曲。

私を仲間に認めてくれた時の曲。

ステージ横にはけた勇磨が、
トモに礼を言った。

「サンキュートモ。色々と悪かったな」

トモがニヤッとする。

「えーお礼言っちゃっていいの?
アンコール曲、見てからにすれば?」

その言葉に私も気がつく。

今までの中で1番トモとの絡みが多い。

これは恋人同士の設定だから。

腰に手を回しくるくる回ったり、
顔を近づけキスする様な振りもある。

トモに持ち上げられたり、
抱きしめられたりする。

ダンスだから。

触らせるなって言っても、ダンスだから。

割り切って踊った。

勇磨は中盤から睨みはじめ、
とうとう止めに入ろうとして、
ツバサくんに押さえつけられてた。

本当、ガキだな。

でも、そこが好き。

勇磨、大好きだからね。

今まで秘密にしててごめんね。

心配かけて、嘘ついて、ごめん。

心を勇磨でいっぱいにして、
アンコール曲を踊り切った。

シークレットステージは大成功だ。