ツバサくんは、
私への罵声に慣れてないから、
彼女達に本気で向き合ってなだめてる。

「なぁなは優しい子なんだ。
ウザくないし。
俺の事、叱ってくれたり慰めてくれる。
あ、ほら、
浴衣着てるゴリラなんていないし、
すごくかわいいよね?
ブスなんかじゃないよね?」

なんかよく分からない説得に、
ファンの皆さんも、
あきれたり、面白がったり、炎上したり。

だけど、嬉しい。

「ツバサ、やめろ。
それ以上言うと俺が耐えらんない。」

ツバサくんは首を傾げる。

思わず笑っちゃう。

やっぱり、かわいいなぁ。

そんな私に気が付いた勇磨は、
おもむろに提案した。

「ナナ、アイツらは任せる。
ファン達を好きにしちゃって。
俺はツバサの悩み相談を受ける。
俺の方が適任だと思う。
男同士、な、ツバサ」

え、なんで。

私だってツバサくんと話したいのに。

でも。

ツバサくんも頷いて納得してる。

仕方ないのかな。

確かに男同士の方が、
話しやすいのかもしれないし。

もうステージの準備に行かないといけない。

「分かった」

私の言葉ににっこりと笑って、
頭をポンポンとして歩き出した。

あーあ、写真、撮れなかったな。

まぁいいか。

私も行くか。

そう思って歩き出した時、
また周囲に悲鳴が上がった。

驚いて顔を上げる間もなく、
後ろから腕を回し、
グッと、引き寄せられた。

「勇磨!」

そう言う私の耳元で囁いた。

「ほら前、見て笑って。」

勇磨の手に携帯。

「撮るんだろ」

うん、頷く。

「これでスネるなよ。
いい子にしててね。
俺がいない間に他の奴にナンパされんなよ」

そんな、モテないって。

「いや、物好きはどこにでもいる」

バカ勇磨。

そして大事な事を言い忘れてた事に気付く。

「ねぇ勇磨!
午後のシークレットステージ、行こう。
なんかすごく楽しいって。」

勇磨は首を傾げて

「ふーんそうなんだ。じゃあ行くか」

うんうん

来てね。

「じゃあ一緒に行こう。後でね」

いやいや、違うっ。

「あの、勇磨、
それ、1人で行って見てきて。」

途端に不審な顔付きになる。

バレるかな。

なんて言えばいいの?

「なんで、ナナは?」

やっぱそうなるよね。

「う、ん。あの、さ。
それは行くことは行くんだけど、
勇磨とは行けなくて」

勇磨の不信感いっぱいの目に、
耐えられなくなる。

空気が張り詰める。

どうしよう、怒ってる。絶対。

手が震えてきた。

「じゃあ行かない。
ナナが他の奴と行くのに、
なんで俺だけ1人で行かないといけないの」

そうだよね。

でも。

お願い、分かって。

「誰と行くの?トモ?」

いや、それは違うけど、違わないかな。

でも勇磨の言う一緒って意味じゃないから。

あー黙ってるとまた怒らせちゃう。

「いーじゃん。俺も行きたい。
シークレットステージ。俺と行こうよ。
なぁなは工藤を裏切ったりしないよ。
なぁな、工藤の事、超好きだもんね。」

ツバサくんの言葉に空気が和らいだ。

涙目でツバサくんを見る。

ありがとう。

「分かった。その代わり」

私の肩を引き寄せて囁く。

思わず勇磨を見上げた。

本気?

勇磨は頷く。

私は息を大きく吸って、
ファンの子達に向かって一気にぶちまけた。

「わっ私の勇磨だから、取らないで」

一瞬シーンとする。

もうどうにでもなれ。

「写真もおしまいっ。勇磨は貸さない。
散って。私だけの勇磨なのっ」

その後、彼女達がガヤガヤはじめる。

勇磨は大爆笑。

ツバサくんは驚いて私達を見てる。

「よくできました。」

そして彼女達を見渡して言った。

「ごめんね、俺、この子の物なんだ。」

そう言って顔を近づけ、
ほっぺにキスしてみせた。

「この先、ナナを傷付けたら、
俺許さないからね」

そう公言してくれた。

もう。

勇磨め!

「シークレットステージ、
必ず見に行ってね。約束だよ」

また頭をポンポンして
「分かったよ」と約束してくれた。

振り返りファンを睨んで解散させてから、
制服に着替えた。

鏡の前で髪をほどいて思う。

ラストのソロ。

このままじゃダメだ。

その場でストレッチして駆け出した。
急いで急いで目的の教室に入る。

「ナナミ、どうした?」

アヤノ!

「ねぇアヤノ、お願いがあるの」

よし、これでソロも成功する!