教室に戻ると、みんな準備を始めていた。

「どこ行ってたの?」

勇磨に聞かれた。
すかさず南さんが割って入る。

「ごめんね、工藤くん。
木下さんに今までの事を謝ってたの。
木下さん、許してくれた。
私が工藤くんを諦めない事も、
許してくれたの。
ふふ。
許してくれるって事は、
それだけの気持ちって事なのかね」

この女!

私の目が皿になってるのを見て

「うわっ、怖っ」

と逃げていく。
ムカつく!

「おいっ、どういう事だよ」

ちょっとむくれる勇磨。

「勇磨は分からなくていいの。
女の戦いだから。
大丈夫、絶対負けないから。」

ふーん。
そう言ってちょっと納得いかない顔をする。

「女子、着替えるよ」

そう声がかかり、
みんなで浴衣に着替えに行った。

南さんは着付けが得意とかで、
私の着付けをしてくれた。

「何?胸とお腹とお尻が一直線。
子どもの体型ね。
まさに浴衣映えする体!」

ディする事も忘れずに。

しかもぎゅっと締め付け苦しい。

悪意しかない。

みんなで教室に戻った。
男子達が女子の浴衣姿に華やぐ。

勇磨も私の姿を見て、ちょっと言葉を失った。

「ナナ、見事に幼児体形」

南さんと同じ事を言った。

もういい。

背を向ける私の肩を掴んで

「ごめん、冗談。
マジでかわいすぎて照れた」

勇磨の顔、見たい。

でも振り向かせてくれなかった。

「ダメ、こっち見ないで」

うわー照れてる勇磨、見たい。

なんだよ、もう、心臓もたない!

「後で一緒に写真撮ろうね」

そう約束した。

だけど。

その約束も守られないまま、
午前中が終わりそう。

もうすぐステージの準備で、
浴衣脱いじゃうのに!

焦る私をよそに、
勇磨の前には、
写真を撮りたい女子の長い列。

いつもなら断る勇磨だけど、
人気のクラスに賞が出るという事もあり、
本気モードの担任に、
無理矢理写真コーナーを担当させられてる。

勇磨目当ての客ばかり。

きゃあきゃあ、うるさい!

みんなに笑えとか近寄れとか言われ、
不機嫌ではあるが、クラスの為に働いてる。

そして、私はずっと不機嫌。

私だってまだ、
写真撮ってもらってないのに!

「並べば?」

南さんに言われ余計に腹が立つ。

しかも!

私が勇磨を睨んだり、
怒ってるのが楽しいようで、
勇磨の機嫌がだんだん良くなる。

反比例だ。

調子に乗って自分からポーズまで決めて、
女子を喜ばせてる。

イライラする。

あー、くっつくな、バカ!

ダメだ!もう、限界!