とうとう文化祭当日がやってきた。

緊張して早起きし過ぎた。

シークレットステージは午後からだ。

午前中は文化祭を単純に楽しみたい。

浴衣で接客する。
ママに出してもらった浴衣を持ち、
髪を和風にまとめた。

大きな花の髪飾りをつける。

貝殻のヘアピンも忘れずに。

ステージの衣装の最終確認は、
昨日何回もした。

体調もいい。

前を歩く勇磨とトモを見つけた。

この2人意外と気が合うのか、
最近よく一緒にいる。

イケメンが2人揃うことで、
女子のボルテージが更に上がる。

走って2人に追いついた。

「勇磨、トモ、おはよ」

2人が振り返る。

「ちび、今、走っただろ。
ストレッチしたのか」

はい、すみません。

「最後まで気を抜くなよ」

そう言って、
私の頭を触ろうとするトモの手を、
ペシッと払う勇磨。

「ガキ!」

トモが笑う。

「ナナ、髪、いつもと違う。かわいいな」

勇磨の言葉ですっかりトロける。

「うん、浴衣着るからさ」

途端に2人共、爆笑する。

「相撲のお弟子さん」

し、失礼な!

私、そんなにデカくないっ。

「あ、じゃあコケシ」
「それ、あるな。」

ないしっ。

もういいっ。

怒って足早に教室に入った。

「おはよう、木下さん」

南さんだった。

あの日以来だ。
部室棟で、私の横を走り過ぎて行った。
あれから話す事も、私に絡む事もなかった。

変な空気だ。

「おはよう」

そう言って向かいあった。

「ちょっといい?」

南さんについて渡り廊下に来た。

緊張する。

「何?話って」

南さんはいきなり頭を下げた。

「ごめんなさい。私、嘘ついた。
木下さんから、
工藤くんを取ろうとして騙したの。」

驚いた。

まさか南さんが謝るなんて。

なんか企んでるとか?

「なんなの!
私だって素直に謝る事もあるんだから。
だいたい木下さんも悪いよ。
工藤くんがいるのに、
他の人と遊んだりして。
しかもイケメンばっか。
なんでブスなのにモテるんだろ。
信じられない」

ちょちょちょっと。
最後は悪口になってる。

「でもま、いーか。
謝ったからもうチャラね。」

なんなの、この人。
理解できない。

「言っとくけど私、
工藤くんを諦めた訳じゃないから。
これからも、
汚い手でも騙してでも何しても、
木下さんから奪うからね。
よろしくね。」

握手までしてきた。

これは宣戦布告なんだな。

清々しいほどに性格が悪い!

「受けて立つ」

そう言って教室に向かった。