やった!

勇磨と帰るの久しぶりだ。

嬉しい。

「勇磨、デートってどこ行くの?」

声が弾む。

黙って私を見つめる勇磨。

え?何?

そのまま、なかなか口を開かない。

何?

どこ?

「俺さ、行きたいとこあるの。」

うん、いいよ。

勇磨が行きたいところ、すごく行きたい!

「ナナの部屋」

そう言って目線を外す。

え!

うち?

うちに行きたいの?

何で?

それってデート?

何?

どういうこと?

「俺、どうしても納得いかないの。
ツバサがナナの部屋に、
何回も出入りしてる事。
俺は1回もないのに」

思わず吹き出した。

バカ!

なんだ、それ。

真っ赤になって言わないでよ!

結局、超かわいい!

ずるいなぁ、勇磨は。

でもまぁ。

「分かった。いいよ。
今日はママもいると思うけどいい?」

勇磨がニヤニヤする。

「逆にお母さんいないと、
ナナちゃん危険だよ。」

バカ!そういう事言うなら呼ばない。

ケラケラ笑う勇磨は、
私の手をぎゅっと握って歩き出した。

「さ、帰ろうぜ!」

楽しい!

そのまま桜並木を歩き、
たわいもない話をしながら歩いた。

玄関で迎えてくれたママは大絶叫した。

「きゃあ!
ナナが熱出した時に来てくれた子だよね?
やったね、ナナ!
ママは断然、工藤くん推しだったの」

勇磨が嬉しそうに挨拶をする。

すっかり勇磨の魅力にやられたママが、
勇磨をなかなか離さないから、
強引に話を切り上げて、
私の部屋に連れて来た。

「女が部屋に男を連れ込むな」

そう冗談だか本気だか、
分からない口調で勇磨が言ったけど、

無視!

「へぇ、キレイにしてるんだな。
うんうん、女の子の部屋って感じ」

キョロキョロ見渡す勇磨。

恥ずかしい。

「あ、これ」

そう言って棚の上の小瓶を手に取った。

持ち上げて日に透かして見る。

中でピンクの貝が揺れた。

キラキラと光る貝を、
目を細めて見る勇磨の横顔は、
イケメンすぎ!

「ナナが欲しいって泣いたやつ」

バカ!余計だ。

小瓶を棚に戻してから、
横にあった中学の卒業アルバムを見つけた。

うわっ、それ。

ダメなヤツだ!

慌てて取り返そうとしたけど、
私の様子で不審がり目で威嚇する。

ページをゆっくりとめくる。

「あ、これナナだ。
すぐ分かった。かわいい」

かわいいって。

もう、照れる。

でも問題はその先だ。

ツバサくんが写ってる写真のほとんどに、
私が写ってる。

しかもストーカー級にツバサくんを見てる。

2人で仲良くくっついてる写真もあって、
それはアルバム委員がふざけて、
ハートで囲んでる。

問題のページを進みながら口数が減る勇磨。

「ナナは、本当にツバサが好きだったんだな」

そう言ってアルバムを閉じた。