「ちょっと、勇磨、騙したの?」

私の腰に回した手に力を込めて、
離してくれない。

「だって、もっとこういうの、
して欲しいんだもん」

甘えてくる。

「いいじゃん、たまには。
いつも俺ばっかだし。
俺だってナナにぎゅっとされたい。
でも妬いたって話は本当だよ」

うぅー、勇磨。

かわいすぎてヤバイよ。

「仕方ないなぁ。勇くんいい子」

そう言って髪を撫でる。

「ママ、いい匂い。」

ママって言うな!

「ねぇナナ、俺さ、本当にナナが好きなんだ。」

うん、知ってる。

「は?上から来たな。
お前だって鈍感なだけで、
ずっと俺が好きだった癖に」

あ、まぁ。

そうだね。

「いつから、俺が好き?」

ぎゅっと勇磨の顔を抱きしめる。

「たぶん、中2病の陰気野郎って認識した時」

きっとそうだ。

あの時から気になってた。

無視しても良かったんだ。

「なんだ、じゃあ俺より先だな。
結局、俺を狙ってたんだな。」

勇磨が笑う。

「そうだよ、作戦。
その手に乗っちゃったね」

2人で笑った。

「俺も隣の席に、
ボケッと外を見てニヤついたり、
すぐキレて暴言吐く、
生意気な女が座った時から、
気になってた。一緒だな。」

うん。

一緒だね。

して欲しい事も嬉しい事も一緒だ。

「私が泣きたい時いつも、
勇磨が泣かせてくれて包んでくれたから、
これからは私もこうやって
勇磨を抱きしめて包むね」

勇磨がかわいい。

おかしいけど、小さな子みたいに、
しがみついてくる勇磨がかわいい。

ふとまた思い出す。

胸に勇磨を抱いてた。

ぎゅっと抱きしめてた。

これは。

勇磨を確認すると、
明らかに分かってて頰を埋めてる。

「きゃーちょっと変態、離して!
訴えるからね。バカバカ!」

上目づかいで私を見る。

「お前が抱きしめたんだろ。
こっちは不可抗力だ。
変態呼ばわりされる筋合いはない。
でもやめない。変態でいい」

でもまぁいいか。

黙って目を閉じる勇磨を、
抱いて包んであげよう。

今のところ変な気は起こしてなさそうだし、
子どもになりきってる。

小さな勇くんを、
ヤキモチ妬きの勇くんを慰めてあげよう。

不思議。

初めて会った時は中2病で話が通じない、
こじらせ陰気野郎だった。

でも今は、
大人っぽくて子どもでケンカっ早くて、
ヤキモチやきで、でも優しくて、
強くて、かわいい。

そして私を信じて応援してくれる。

私の味方だ。

どんな勇磨も、好き。

勇磨の色んなところ、全部見ていきたい。

私もステージで全てを見せる!

勇磨に想いを全て伝えるね!