そのまま背を向けて歩き出した。

あーあ、また怒っちゃった。

人に嫌いって言ったのも初めてだ。

なんだろ、あの人は。

何言っても俺様、俺は特別。俺を狙う。

あーイライラする。

はぁー。公園に行くか。

私には時間がないんだった!
あんなバカに構ってる暇はもっとない!

いつもの公園で練習を始めた。

イライラしてるからか全く入らないどころか、
あの四角い板にも当たらない。

薄暗くなり、人気がなくなった。

街灯でやっとゴールが見える。

そろそろ帰らなくちゃな。

そう思った時、背後に人の気配を感じた。

「よお、お姉ちゃん、俺達と遊ぼうぜ」

突然声をかけられ振り返ると、
強面のお兄さん達が5人立っていた。

「あ」

一瞬の隙をついて、私のボールを奪いニヤニヤ笑う彼らに取り囲まれた。

ボールを取り返そうと彼らに向かって
走って行こうとした時、
誰かに突然手を引かれた。

驚いて見上げると工藤くんだった。

そのまま強く手を引かれ、
訳が分からないままに走らされた。

「ねぇ、ボール!」

走って走って駅前のコンビニまで走った。

「ちょっと離してよ」

立ち止まり、手首を掴む手を振りほどいた。

「木下、いい加減にしろよ。
夜、公園で女が1人で危ないとこだっただろ」

息を切らして私を怒る工藤くんは、
いつもの中2病の陰気野郎とは違った。

助けてくれたつもりなのか?

「木下がどうなろうと、
俺の知ったこっちゃないけど、
気分悪いんだよ。」

撤回。冷血人間!

「危ないって、あの人達、知り合いなんだけど」

私の言葉に一瞬驚くものの、
すぐに怒りが顔いっぱいに広がった。

「ふざけんな。まぎらわしい事しやがって」

まぎらわしいって、なんだ。

全て俺中心。

油断ならない、俺様野郎。

「いちお、言っておくけどね。
あなたの気を引くために、
あの人達を配置した訳ではないからね。
でもありがとう。」

お礼は言った。

なのに

「気に入らない。俺も木下が嫌いだ。
俺に関わるな。
木下が、俺に関わるな。
俺が言う言葉だ。木下に言わせない」

はぁ。

何の話?

もしかして学校で私があなたに、
嫌いって言った事を根に持ってるわけ?

大きなため息をついた。

あきれる。

でも怒らず冷静に。

「やっぱり、あなたって会話が成立しないね。
ありがとうの返事が嫌いって。
人間的にどうなの?
国語、勉強してよ。
お互い嫌いならそれで良くない?
どっちが言うとかそういう話じゃないよね。
だいたい助けてもらって言う事じゃないけど、
まぁ知り合いだから助けるってのも違うけど、
この件に関しては、あなたが私に関わったよね?」

工藤くんの怒りも収まらない。

「は?俺から木下に?
ふざけんな。本当に俺を怒らせたいんだな」

はぁー。

この人、何を言っても伝わらない。

もう諦めよう、そう思ったその時、
甘い声が響いた。

「あ、勇くんだぁ」

勇く、ん?

ん?