え、えー。

そうだったの?

アヤノとトモが?

知らなかった。

「お前、彼女がいるのに、
何でナナに構うんだよ!
ナナとデートしまくってだろ」

アヤノに聞かせないように、
トモの耳元でこっそり言う勇磨。

その姿にアヤノが優しく笑う。

「勇磨くん、ありがとう。
でもね、私がトモに頼んだんだよ。
トモとナナミは対なんだ。
パートナーなの。
どちらかの比重が重いと、
バランスが取れなくて結果、
私達のバランスも崩れる。
ナナミが喜ぶ場所や心に響く場所に
連れて行って欲しいってお願いしたの。」

そうだったんだ。

アヤノ、感謝。

でも、勇磨はまだ納得いかない。

「じゃあ、君がナナと行けばいいだろ。
なんで彼氏を貸すんだよ。
不安とかになるだろ、普通。」

アヤノは手を叩いて笑う。

「ホントだね。
私もずいぶん、ヤキモチ妬いたぁ。
でも、信じてるんだ。うん、信じてる。
それにこのヤキモチも、
私にはプラスなんだよね」

トモがアヤノのおでこにキスをした。

ヤバっ

アヤノが女の顔になってんじゃん!

マジかー。

「だから、アイドル、じゃないや、
勇磨はガキなの。
俺は好きな女を信じるし、彼女も俺を信じる。
そして彼女の願いは俺の願いでもある。
悪いね、一歩先で」

そう言って笑って、また勇磨をイラつかせる。

「ふざけんな。ムカツクな。」

まぁまぁ、と勇磨とトモの肩を抱いて、
タツキが仲立ちをする。

「まぁ、これでトモがちびに手を出さないのは、分かってもらえたよね。
あと少しの間だけ、ちびが君にも
秘密を持つことをゆるしてくれ。」

みんなが頭を下げるから、
私も頭を下げた。

勇磨がみんなを見回す。

「分かった。俺もナナを信じる。
だけど俺がムカついたら、
トモを殴るかもしれない。
俺はガキだからな。」

トモがため息をつく。

「分かったよ、勇磨。そうしてくれ。
女嫌いで有名な君が、
そんなに夢中になる子なら、
俺も間違いを起こすかもしれないしな。」

その一言がまた勇磨に火をつける。

「てぇめぇー」

タツキが止める。

ミッキーとアヤノは爆笑だ。
トモが笑って言う。

「冗談だって。約束する。
ナナちゃんには指一本触れない…
というのは無理か。
結構、触っちゃうな」

掴みかかる勇磨を離そうとするタツキが限界だ。

ミッキーがトモをパコっと殴る。

「やりすぎだ。あんまり煽んな。」

トモも反省する。

「ごめんごめん、勇磨。
約束するよ、俺はお前と友達になる。」

は?

何言ってんだ?

勇磨がまた睨む。

「友達の彼女は奪わない。
俺はそれだけはしない。
それじゃ納得しない?」

睨んでた勇磨の瞳が和らぐ。
臨戦態勢が落ち着く。

「分かった。
じゃあ俺もお前を友達だと思うよ。
だけど、あんま、ナナに触んじゃねー。
お前、今まで俺がどんだけ!」

言いながらヒートアップする勇磨。

本当、ガキだな。

「分かった。必ずお前のところに返すよ」

トモが折れてくれた。

良かった。

勇磨もなんとか納得した風を装う。
大好きな仲間を勇磨が受け入れてくれた。

勇磨を好きになって良かった。

「じゃあ行ってこい。」

そう勇磨に送られて、
私達は練習に向かった。

私も勇磨を信じるよ。

勇磨の夢を私の夢にするから。

大好きだ、勇磨。