もう涙で勇磨が見えない。

私の涙を指で拭ってくれた。

「ごめんね、ナナ。
俺は本当に最低でガキだな。
アイツの言う通りだよ。
懲りずに何回もナナを傷付ける。
ナナがそっぽを向くと、意地悪したくなる。
自己嫌悪になって、
ナナから距離を置きたくなるのに、
すぐに近付きたくなる。
なんだろうな。」

私も勇磨をぎゅっと抱きしめる。

「ナナが気にするから言うけど、
俺は南さんと一緒にいたつもりも、
並んで歩いたり、
休み時間を一緒に過ごしたつもりもない。
アイツが勝手にまとわりついてただけだ。
でも、振り払わなかった。
南さんの気持ちを利用した。
ナナが嫌な顔をするのが見たかった。
最低なのは分かってる。
ナナが、
ヤキモチ妬いてくれるんじゃないかって、
期待してた。
ガキだよ、全く。」

心に刺さったトゲが溶けていく。

良かった、南さんとキスしてない。

観覧車には乗ってない。

また涙が溢れる。

「ごめん、もう、いじわるはしない」

そう言っておでこにキスした。

「いーよ、いじめて。
私、勇磨に意地悪されるのも好きだから」

思わず、ホッとして変な事言っちゃった。

勇磨が吹き出す。

「なんだ、それ。お前、そういう事、言う?」

だって。意地悪されても、
距離を置かれるよりいいんだもん。

透明人間になるより、いい。

そういう事を言いたいんだけど。

「いーの?
本当に俺にいじわるされても。
俺、結構、Sなんだけど。」

そう言ってケラケラ笑う。

「いーよ。いっぱい、いじめて」

途端に真っ赤になって横を向く勇磨。

「やめろ、そういう事言うの。
変な気になる」

私も赤くなる。

違うって。

「勇磨、好き。すごく好きなんだ。
だから、もし、
私の言葉や行動が勇磨を傷付けたら、
教えて欲しい。
勝手に想像して私に背を向けないで。
ちゃんと説明させて。
勇磨の事だけは絶対に諦めたくないから」

勇磨はぎゅっと目を閉じて、
また強く私を抱きしめてくれた。

「キスしていい?」

そう聞いて、頷く私にキスをした。

いつも私の了承なんか得ないで、
勝手にするくせに。

「じゃあさ、早速だけど、意地悪していい?」

勇磨がニヤッとして切り出した。

「う、ん」

私をくるっと後ろ向きにして、
背中を思いっきり押した。

びっくりして振り返る。

「トモの所に行け!」

そう言った。

なんで?

心がきゅーっとなる。
私また間違えた?

嫌だよ、勇磨!

勇磨に抱きついて、
ぎゅっとしがみついた。

「なんで?嫌だ。行かない。
それだけは嫌!」

勇磨が私を離そうとするから、
余計に力を入れてしがみつく。

「嫌、私、決めたから。勇磨から離れない」

勇磨の声は笑ってる。

なんで、そんな意地悪は嫌だよ。

嫌!勇磨!

「これ、いいな。
こんな形勢逆転なんて、
あると思わなかったからさ。
最高だな。
ナナが俺から離れないなんてヤバすぎ!」

そう言いながらも離そうとして、
とうとう私は負けた。

「いいから行け。
俺の決心が揺れないうちに。
アイツらと達成したい目標があるんだろ。
夢中になって楽しかったって言ったよな。
その目標、達成してこいよ。
応援する。
またヤキモチ妬いてスネて、
ガキみたいな態度を取るかもしれないけど、
俺はナナが好きだ。
ナナの好きな物は大切にしたいから。
だからいつか話して欲しい。
何に夢中になってるのか。
それまでは聞かないから。」

勇磨!

いいの?ダンス続けても。

シークレットステージを目指してもいいの?