南さんとのこと。

分からないから確認したい。

怖いけど、聞くなら勇磨の口から聞きたい。

勇磨の気持ちが私になくても、
ちゃんと私の気持ちを伝えたい。

諦めたくないから。

勇磨だけは絶対に諦めたくない。

誰にも渡したくない。

勇磨を掴む手に力を込めた。

「勇磨、私ね。
勇磨に話したい事があってね。
今日、体育館に行ったんだ。
南さんに会ったの。
勇磨と付き合ってるって。
観覧車でキスしたって。
それで、私、
気が付いたら1人で観覧車に乗ってた。
バカみたい。
故障して止まって揺れて怖くて、
勇磨に電話もしてた。
ごめんね。
南さんにも悪いことをした。
勇磨が南さんを好きでも、
私、どうしても言い、」

私の話が終わらないうちに、
勇磨は私の口をキスでふさいだ。

え。

なんで。

ちょっと待って。

まだ話の途中なのに。

言いたいのに。

キスなんてされたら私。

「ナナ、うるさい。何回も言わせるな。
俺はナナが好きだ。他の奴は眼中にない。
ナナだけ好きなんだ。」

そう言ってもういちど、
今度は優しくキスをしてくれた。

私のおでこに自分のおでこをくっつけて、
目をじっと見つめ優しく笑う勇磨。

冷え切った心に、
一気に温かいものが流れてくる。

勇磨が好きだって言ってくれた。

抱きしめてキスしてくれた。

キシキシして病んでいた心に。

こじらせていた心に。

「俺、結構、怒ってるんだよ。
ずっと好きだって伝えてるのに、
無視するから。
それに、ツバサだけでも腹一杯なのに、
あのムカツク奴まで出てきて。
イライラして自分でも訳が分からないし、
ナナの様子もどんどん変わるしな。
俺の知らない間に、
付き合う友達も変わってさ。
焦った。
夏休みが終わったら別人になったみたいで。
どんどん手が届かなくなるみたいで。
アイツの言葉しか聞かないしね。
何を聞いても曖昧だし、ナナも怒ってるし。」

うん、怒ってるし悲しかった。

だって勇磨に、
私の友達を悪く言われたくないから。

不良とつるんでるとか思われたくないし、
ましてやお盛んでもない。

あの人達といると楽しい。

私の新しい目標ができたんだよ。

今、夢中なんだ。

あの人達が本当大好きなの。

「トモが大好きなの?」

勇磨の瞳が切なくきらめく。

ドキンとする。

違うよ、勇磨。

私はみんなの事を言ったんだよ。

でも。私も引っかかってる。

「勇磨は?勇磨はどうなの?
私を好きって言ってくれたけど、でも。
南さんと観覧車乗ったんだよね?
夕陽がキレイって南さんに教えてたし。
2人で並んで歩いたり休み時間も、
きゃっきゃっやってんじゃん。
南さんが好きなん、でしょ」

聞いてから後悔する。

そうだよと言われたらどうしよう。

女嫌いで中2病の勇磨だから、
女の子の友達なんていないし。

まともに女子とは話さなかった。

でも、南さんの事は拒絶しなかった。

それがどうしても引っかかる。

勇磨を信じられない訳じゃない。

でも、やっぱり、引っかかる。