好きなわけない!

むしろ、嫌いだ!

私を信じない勇磨なんて。

「ふーん、お互いガキって事か」

勝手に納得して気持ちを切り替えた。

「さぁ、ちび、やってやろうぜ!大丈夫。
ステージを勝ち取れたら、
アイツだって分かってくれる。
オレ達を不良軍団なんて誰も言わなくなるよ」

確かにそうかもしれない。

そうだね。泣いてる場合じゃない。

私の大切な仲間との日々が、
かけがえのないものだって、
証明する為にオーディションを勝ち取ろう。

トモの言う通りだ。

シークレットステージが成功すれば、
きっとみんな分かってくれる。

金髪だって派手だって、
みんな夢を持って、
真面目に向き合ってる事を。

心を1つにしてオーディションに挑んだ。

やれるだけやった。

やりきった。

悔いはない。

だけどもっともっと踊りたいから。

合格したい。

生徒会室に代表者が呼ばれた。

タツキが代表だ。

私達はタツキの帰りを、
まさに祈って待ってた。

アヤノは緊張しすぎて震えてるから
トモがずっと手を握ってあげていた。

ミッキーは気にしない振りをして、
雑誌を見てるけど、ページが全く進んでない。

私は黙って目を閉じて待った。

どうか神様お願い。

「ジャーン!合格!しかも、30分枠!」

そう言ってタツキが戻ってきた。

私達は抱き合ったり、
歓声をあげたりして喜んだ。

やったー。

これで勇磨に伝えられる!
私の夢と仲間達の事を!

自分で思ってハッとする。

まだ信じて欲しいのか。

笑える。
勇磨なんて大嫌いなのに。

トモが笑って私を見た。

「ちびは泣かないんだな。
さっきはあんなに泣いてたのに。」

もう泣きません。

ステージ成功させるまでは泣かない。

それとケンカも買わない。

約束します。

「いい心がけだな。せいぜい頑張れ」

シークレットステージはその名の通り、
シークレットだから、
当日までは秘密にしないといけない約束だ。

バレたら最悪、出られない事もあるらしい。

私達は約束を決めた。

①練習はトモの剣道場のみ。

②ステージの話は学校ではしない。

③友達親兄弟にも秘密にする。

④心と体を大切にして残りの日々を
ダンスの事だけ考えて過ごす事。

⑤問題を起こさない。

そして、トモからはもう1つ、
約束を言い渡された。

「ちび、俺達の息が合わないと、
ステージは成功しない。
ちびは感情的になるし気持ちが逸れやすい。
俺とちびはペアになる事が多いよな。
俺がパートナーだって事を忘れないで。
何よりも俺の言葉を聞いて。
好きな男よりも俺。
あのアイドルくんに振り回されないで」

うん、分かってる。

私の気持ちがブレるのは勇磨の事でだ。

約束する。

でも、好きな男って。

「なんだよ、アイドルくんって。
ちびに彼氏がいるのか。
俺がチェックしてやる」

タツキが騒ぐ。

「タツキはちびの父親か!」

ミッキーが笑う。

「あ、私、知ってるよ。
すごいイケメンだよね。
ファンクラブあるんだよね。
2年の中でも人気だよ。」

アヤノが言った。

「ふーん。あれ、イケメンなんだ。」

トモが不服そうにする。

「俺はアイツ、嫌い。
ガキだし、なんか俺に突っかかってくるし」

それは、トモが煽るからでしょ。

でも大丈夫!

もうブレない。気持ちを逸らさない。

ダンスの事だけ考える。

勝手に怒って背中を向けてる勇磨なんて、
忘れる!頭から追い出す!

これでいい。

私に勇磨なんて必要ないから。