その時、教室のドアが音を立てて開いた。

「ナナちゃーん!今日は、プラネタリウムデートだぞー、あ、あれ?」

振り返るとトモがいた。

私と勇磨を交互に見る。

「お取り込み中だった?ごめん。終わるまで待ってるね」

そう言って私のカバンを持った。

ちょ、ちょっと、この状況、まずいのでは?

プラネタリウムデートって。

もっと言い方あるでしょ。

私の表現の勉強なんだし。

私、まだ繁華街疑惑についても話してない。

勇磨はチラッと私を見てトモを睨む。

「お前、ナナになんの用?」

明らかに敵意むき出しでトモに突っかかる。

トモは鼻で笑って応戦する。

「あー、えっと君は、そうそう、アイドルくんだ。
言葉通りだよ。デートの誘い」

トモ!やめて。

勇磨の怒りのボルテージが上がる。

「てめぇケンカ売ってんの。ナナは俺と話してるんだ。
お前は引っ込んでろ」

今にも飛びかかりそうな勇磨

トモはため息をついて引き下がった。

「アイドルくん、子どもだな。まぁ、いいけど。
ちび、校門で待ってるね。早く来いよ。あと、男は選べよ」

バカ!

勇磨を煽らないで。

トモが立ち去った後、しばらく沈黙が流れた。

最悪だ。

「どういう事?」

勇磨の声が怒ってる。

下を向いて目線を外した。

「アイツ、友永だよね?先輩が見たのはやっぱりナナなの?」

「デートって言ってたよね。俺を見ろ!ちゃんと説明しろ」

上目遣いで睨みをきかせる勇磨。

指先が冷えて震えた。

でも悪い事なんてしてない。

ちゃんと説明しようとした。

「今、言おうと思ったよ。話があるって言ったじゃん。
でも勇磨が勝手に勘違いするから、言えなくなったの。」

勇磨の迫力は増す一方だ。

「俺が悪いって言うの?」

違うよ、怒らないでよ、話せない。

「そんな事言ってないじゃん。誤解なんだよ。
派手だけど、みんな悪い人じゃないし、
トモだって優しいし大事な私の仲間なんだよ」

怒らないでよ。

信じて欲しいのに。

応援して欲しいのに。

やっと、好きな事見つけたのに。

勇磨は話を聞いてくれない。

「トモってなんだよ。
ナナ、俺が部活で必死に頑張ってる間に男遊びかよ。
ナナがそんな女だなんて思わなかった。
もう、いいよ。見損なった。」

その一言で私もキレた。

は?なんでそんな事言われないといけないの。

なんでなの?

気付いたら勇磨に怒鳴りちらしてた。

「俺が部活で頑張ってる間に男遊びって、
俺が働いる間に不倫したみたいな言い方しないでよね。
例えそうであっても勇磨に責められる筋合いないんですけど。
何が私を信じるだよ、私を好き?笑わせないで。
私の話を1つも聞かずに勝手に誤解して、
私の大切な人をもバカにして。
私は間違った事も人に恥じる事もしてない。」

勇磨がひるんだのが分かった。

でももう私の怒りは止められなかった。
勇磨も引けないんだと思う。

「でもアイツのところに行くんだろ。俺の誘いは断るのに。
プラネタリウムデートってナナ、アイツが好きなの?」

最後は悲痛な叫びに近かった。

「なんでも好きか嫌いかで決めないで。」

それだけ行って教室を飛び出した。

勇磨なんて大っ嫌い。

嘘つき。

私を信じるって言ったのに。

どんな私も嫌いにならないって。

やっぱりチカの言う事は間違ってたよ。

勇磨に恋はしてない。

こんなに辛くて心がかき乱されるのは恋じゃない。

むしろ大嫌い。

でも、私にはダンスがある。

そのまま走ってトモの所に行った。

トモはわたしの頭をそっと撫でて慰めてくれた。

「辛い事も嫌な事も全ての経験が表現につながる。
そう思え。さ、デートしよ」

全てが表現につながる、か。

トモらしいや。

だけど、デートって言いかたね。

「だってデートだろ。
ちょっとはときめいてもらわないと愛の曲は踊れない」

そうなのかな。

でも実際に愛の表現は苦手だ。

未知の世界。

だから、
私は私の目標の為に前進しないと。

勇磨だっていつかは分かってくれるかもしれない。

チクッとする。

私、やっぱり勇磨に分かってもらいたいんだ。