たかしは家に着くと、リビングには母がいた。

「あら遅かったわね、おかえり。」

「あれ、店は?」

「あたしは休み、体調悪いの、店は涼ちゃんに任せてきた。たかし手伝って来てもいいのよ♪」

そう言われてみれば、母は少し目が充血していて熱っぽい顔をしている。


「やめとくよ、ねぇ、子機使っていい?」

電話の子機を片手に言うと、母はニヤリと笑い。

「相手が女ならいいわよぉ〜。」

「じゃ、借りるよ、相手女だから。」

今は母をかまってはいられない。

たかしは自分の部屋に行くと、部屋着に着替え、制服のポケットに入れておいたメモ用紙を取出し、そこに書かれた携帯の番号にかけた。

「早すぎ、あたしまだ家じゃないのに。」

新任だ。

「あ、いや、早く話したくて、さっきの話が本当なら、俺はあいつを許せないと思うんだよ、先生だって金のために俺をコケにしたんだから。」

「わかったわよ、悪かったって、でも君の大切なものは何も奪ってないはずよ、少々の刺激があっただけで。」

「でも信じられないな、秀司がそこまでするなんてさ、金を渡してまで、俺を…。」 

「怒ったり、落ち込んだり、君おもしろいね、だから秀司君にからかわれるのかもね。あ、怒らないでね。」 

「そうかもしれないな、俺見かけよりもずっとガキだし。」

「あはは、ごめん。でも、秀司君が君やあたしの事を色々調べて、観察しているのは事実よね。写真、彼、写真好きでしょ、あたし見せられたの、あたしが付き合ってる男といる現場を撮った写真、彼は再婚してて奥さんがいるから、お金を出すのはあたし、だから、あたしは夜の仕事をしてるんだけど、その写真もあって、彼には知られたくないし、だから秀司君の言う通りにしたのよ。」

「他には?写真、他にどんなのを見た?」

「君のもあるかも。あたしは見てないけど、彼は何か気持ち悪いくらい、危険な人物なのかも。」