「…。」

たかしは絶句した。
見てはいけないのだけれど視線を外すことすらできず、口をぽかーんと開いたまま、何とまぬけな顔だっただろう。

「あなたは秀司君にはめられたわね。」

訳の分からぬ時に訳の分からぬ事を新任は言った。

「は?」

「あなたは秀司君にはめられたの、私とこうなるように。でも安心して、あたしは子供に興味ないから。」

さらに訳が分からない。

新任はたかしの隣に座り、たかしの首に腕をまわすと、耳元で囁く。

背中のあたりがビクッとしたが、どうにか持ちこたえた。

「とにかく、目線はそのまま、隣の教室とをつなぐドアのガラス窓から丸見えなの、そこをふさぐために、ドアの上の部分にフックが二つあるから、あたしの上着と君の制服の上着をかけて。自然によ。」

僕は言われたとおり、動いた。

緊張していたが案外自然とできた。

振り替えると、新任はニコッと笑い、OKサインを出した。
服を着ると、またソファに座り、僕と向かい合い、小さな声で話しはじめた。

「おどろかせてごめん、あたし頼まれたの、秀司君に。」

「何を?訳分かんない、俺をおちょくってんのか?」
段々、イライラしてきた。
「あたし秀司君にお金もらって、あなたを男にしてくれって頼まれたの。」

怒りで、頭が熱くなってきた。

「ふざけるなよ、余計なお世話だ、しかもこんなやり方卑怯だ。」

僕はお茶を飲み、自分を落ち着かせようとした。
なぜアイツが、関係ないだろ、俺がいつ誰とそうなろうと。ふざやがって…

「落ち着いて、確かにこんなのおかしい。でも、今はただお茶を飲んでるだけで、何ともないわ、あたしもお金が必要だったのよ、まぁ、人には色々あるのよ、だから秀司君の作戦を聞いて、これならと思ったの、だからお願い!あたしとはそうゆう事になったってことにしといてね。」

意味分かんねぇ。どいつもこいつも勝手すぎる。

僕と新任は小一時間してから、僕から先に部屋を出た。

平然とした態度で気付かれないように。